第2分科会 テーマ「人権擁護」
会 場 4階 大研修室 参加者数 60人
基調提案者 弁護士法人岡山パブリック法律事務所 社会福祉士 新名 雅樹
運営責任者 岡山県手をつなぐ育成会権利擁護委員会 福田 耕治
司 会 岡山県手をつなぐ育成会権利擁護委員会 近藤友加子
司 会 岡山県手をつなぐ育成会権利擁護委員会 岩月 成臣
提 案 者 岡山県手をつなぐ育成会権利擁護委員会 村上 三子
提 案 者 井笠圏域障害者相談支援センターふぁみりあ相談支援員 新居 宏介
記 録 者 岡山県手をつなぐ育成会権利擁護委員会 藤林小百合
(11:15) 福田委員長(権利擁護委員会)より、注意事項の確認
・禁煙のお願い 喫煙場所の確認
・携帯電話について
・非常口の確認
・弁当について
(11:17) 開会 福田委員長あいさつ
・日程の説明
・アンケートのお願い
(11:21) 司会者へ 提案者紹介
(11:23)
基調提案 「人権擁護における障害がある方の意思決定・意思表明の重要性」
弁護士法人 岡山パブリック法律事務所 社会福祉士 新 名 雅 樹
配布資料
事務所は、岡山市役所近くにあり、現在、成年後見600人を担当している。
「NPOころばぬ先」での講演でも、親亡き後のことはクローズアップされているが、
本人の思いはどうなのか?・・・ふと考えてしまう。
これから先、家族はどう考えていけばいいのか?本人はどう守られていくべきなのか?
1.虐待防止や差別の解消、成年後見等の法整備における課題
資料(2) 障害者虐待防止法(2012年)
高齢者、児童に続いてやっと障害者も・・・
親は「躾なんです・・・」 でも、声を上げている(悲鳴を上げている)のは本人!
法の罰則規定は、非常に曖昧 「防ぎましょう」という程度のもの 警察介入は、レア
障害者本人に訴える力がなければ、「大丈夫よね・・・」で終わってしまう。
声が上がらないと虐待は増え、隠されていく。発見されない。→ 大きな問題!
(3) 障害者差別解消法(2016年)
作業所での差別的取り扱い →「努力して下さいね~」という程度の法律
差別救済の窓口も確定していない。 細かい対策も見えてこない。 具体的にどうする?
社会の中で、差別解消をどう推進していくか?
→ これからのテーマになってくるところ!
(4) 成年後見制度(2000年 民法改正)
全国で30,000件 17万人が制度を利用。 ほとんど65歳以上 高齢者対策
「本人の財産を守る」という効果は上がっている。
制限行為能力者・・・何かをする時、(銀行取引等)ちゃんと対応してくれない。
「自分では、法律行為ができない人」ということになる。
どっちに権利があるの? 権利を奪ってはいけない!
お金の使い方を、誰かに決めてもらってもいいの?
人生の送り方を、誰かに決められちゃってもいいの?
専門家にも、不祥事対策のために、監督人が付くようになってきた。
成り手もいない。 700万人の認知症患者への対応でいっぱいいっぱい。
20万人に満たない知的障害者・・・誰がしてくれるの?
2.障害者権利条約の批准と障害者の権利に関する指摘
(5) 成年後見制度は「条約第12条2項」に抵触する?
世界では「日本の成年後見制度は、暴力的!」と言われている。
不正はなくなるが、本人の意思、権利、選好の尊重・・・本当に図られている?
(6) 第12条2項・・・不利益、被っている! 本当に尊重されてる?
3.障害者の権利における意思決定・意思表明の重要性
(7) ある男性の事例
家族から虐待 いろんなことでぶつかり、トラブルになることも・・・
就労はしているが、破滅的な金銭感覚 年金取れない。 生活保護受給
でも、本人の思いは・・・「結婚したい!生活保護もやめたい!補助人もいらない!」
今は、家計簿をつけている。 補助もやめられそう・・・
・存在の尊重 → 存在は、尊重されるもの
限りがあるからこそ、その人生を生ききるべき
・主体性の喚起 → 問題を抱えているのは、本人! 周りは手を出せない。
本人が決めるプロセスを、どう支えていく?
・支え合いの促進 → どう支えを促進していく?
個の尊重のできる社会を、どう作っていくのか?
4.意思決定・意思表明がなされる障害者の「暮らし」
(8) 地域移行の流れ
軽度の方はアパートへ → 誰が保証人になるの?
リスクはある。 こんなことをしていてはダメ!
でも、こう生きたいという本人の思いを大事にして、支えていかないと・・・
「補助人なんかいたら、恥ずかしいよ!」
本人が、豊かでおもしろい!(困難があるからこそおもしろい!)と思える人生に・・・
「人生、よかったな~」← ここに、本人の意思が入ってこなければダメ!
5.意思決定・意思表明に向けた支援のあり方
(9) エンパワーメント支援の原則
・・・誰もが本人と一緒にいて、楽しいと思える支援の方法
意思表明支援の原則
・・・本人の表出、表現方法を駆使して、本人の思いを表明することを支援
(10) 自己覚知と民主的討議の原則・・・家族の意見も大事
複数の支援者と専門職のチェック
「新名さんが決めたらいいよ!」本人と自由で対等か、常に見直していくべき!
振り返る機会と、討議する場も必要
本人のリスクを冒す自由と、支援者の見守る自由の原則
・・・転んだ時に、いつでも駆けつけられるか?
6.現状の権利擁護活動からの展開について
(11) 本人を保護するのが、権利擁護なのか?
本人に「自分に権利がある」と思ってもらわないと・・・
僕(私)が考える! 支援者が一緒に考える!
(12)【提言】社会環境をどう整えていく? 4つの原則をもとに協議を・・・
(12:02) 終了 昼食
(12:58)
提案1 「親亡き後の我が子のために 悩み続けた成年後見・・・」
権利擁護委員会 村 上 三 子
1.金融機関の窓口で言われた“成年後見制度”から
資料(1) 皆さんは、成年後見制度に興味を持たれたのは、いつ頃でしょう?
(2)(写真は今から7年前の、息子さんの成人式の写真)
(3) 金融機関の窓口で言われた“成年後見制度”
その新聞の記事を見て、郵便局の窓口で「今後後見人をつけないと、預貯金の引出が
できない」と言われた。「後見人をつけないなら、解約しろ」と・・・農協でも同様に・・・
弁護士からは「あなたのような親は、後見人になれない」と言われた。
金融機関には「制度に不安があるので待ってほしい」と言い、条件付きで何とか対応
してもらった。
2.不安だらけの成年後見・・・
(4) 成年後見制度に対する多くの不安(選挙権のこと・本人の意思確認は?etc.)
3.市民後見人養成講座を受講して
(5) 市民後見人の養成研修が始まる!
(6) 私も受講した! 専門的なことがギッシリ!
受講している方々は、受講料8,000円払って7日間みっちり!
「地域の人々のために、役に立ちたい!」という思いだけで、ここまで一生懸命になれ
るのか?・・・驚きだった。嬉しかった。
(7) 専門職の方との意見交換の中で・・・
「重心の意思表示ができない方には、どうしているの?」
→「どんなに重い障害があっても、私は必ず話しかけて反応を見ます。」
→ 寄り添って確認して下さる!こんな人に、親亡き後を託したい!
「本人のために残すのではなく、本人のためにより良くお金を使っていくことが大事!」
4.我が子を誰に・・・
(8) 後見人の横領 数千万円!→ やっぱり誰も信用できない!怒りの声
なぜ、家裁で分からなかったの?
二度と起きないようにするには、どうすればいいの?
絶対安心!ということはないの?
→ 地域の社協などで、法人後見にすればいいのかも!
5.法人後見に託す思い
(9) 権利擁護レベルアップ講座&権利擁護に関する意見交換会(美咲町)
町民後見人 → レベルアップ講座&意見交換会を開催
実際に活動されている方の生の声
・重心の方の身上監護を担当している方
「一緒に選挙に行きます!どんな対応か、とても楽しみ!」→ ご本人は幸せだろうな!
・Q.手帳保持 → Bでも、ほとんど「後見類型」って本当?
A.診断書「後見相当」→ 会ってみて「保佐?」→ 鑑定
→「保佐」になることも有り!
反省・・・問題点だけを鵜呑みにして、勝手に悪いイメージを持っていたのかも・・・
現状を知り、本当の情報をつかんでいくことも大事!
(10) 記録に残そう!
大切な我が子のことを、しっかりと書き留めておこう! 親の思いも・・・
地域の中で守ってもらうために・・・
6.おわりに
(11) 金融機関の預貯金の引出しも、厳しくなってきた。
チェック体制も、だんだん整ってきているように感じる。
美咲町での法人後見、もう少しで始まるという時に、我が子は亡くなってしまった。
社協のような法人後見が、本当にいいのかわからないままになってしまったが、でも
もし息子が生きていたら、私は我が子をそこ(社協の法人後見)に託したいと思う。
【質疑】
Q.近藤さん(司会):うちの子は重度 意思表示が分かりにくい。
身上監護中心の後見がいいと思うが・・・どう思う?
A.村上さん:私達が支援者に、しっかり伝えていくことが大事! 子どもの代わりに
しっかり伝えていく。 書いて伝えるなど、親がしておくべきことがあると思う。
在宅の方は、身上監護が主に必要! 身上監護は、社協等に頼んで、財産管理を
プロに・・・
岩月さん(司会):支援者の立場から・・・本人の人権、親の思いを受け止めながら、
我々は支援していくべきと思う。 プロフィールなど、お子さんの情報がたくさん
あると助かる。
Q.(岡山市育成会の方):39歳 ダウン症の娘がいる。
重度の意思決定の難しさを、日々感じる。 娘の気持ちは、親でもわからない。
うちでは変わらないのに、施設で奇声を上げる。環境が変わったからかな?・・・
そのくらいしか想像できない。親としてどれだけ伝えられるか、モヤモヤしている。
寂しかったから、関わってほしくておもらししたことも・・・もう!何なのか、
一緒に暮らしててもわからない! 意思決定、意思を汲み取るのは難しい!
A.村上さん:わからないことを、誰かと一緒に考えて、誰かが一緒に悩んでくれたら・・・
といつも思っていた。うちの子を知ってくれる人をいっぱい増やす事も大事と思う。
岩月さん:100%理解はできない。理解する努力が大事!その結果、わかるかどうかは
わからないが、それを続けていくことが大事と思う!
藤原さん(岡山市育成会):うちの子は、全身を使って訴えてくる子。訴えてきたその
子の正しい選択は、尊重されるべき! でも、わがままやルールに反することは、
やっぱり聞けない。「意思決定」という言葉が、私達にはなじめない。
もっといろんな話を聞いてみたいと思う。
(13:32~13:40) 休憩
提案2 「虐待ケースに関わって」
井笠圏域障害者相談支援センターふぁみりあ 相談支援専門員 新 居 宏 介
配布資料
1.概要
資料(2) センターの紹介 H22年4月~備中県民局の建物を借りて、業務を行っている。
3市2町から委託を受けて、事業をしている。
2.支援内容
①本人の希望確認
(4)(5) 事例 Aさん(40代男性 手帳B 年金2級 母、姉、本人の三人暮らし)
母も能力、低いかも・・・姉が一家を支えている。 姉は、いつも近所とトラブルを
起こしている。 いつも同じ服を着ている。 気に入らないと怒鳴る。手が出る。
本人は、昼夜逆転。洗濯機は使ったことがないと・・・風呂に入ってる?
(6) 包括支援センターからの連絡
姉が母に対してネグレクトを行っているという事で、センターが継続支援していた。
本人から「仕事がしたい」との事。→ 本人の手帳の更新支援と、就労支援をした。
→ 就労支援については、姉が拒否
生活リズムを整えるため、通所を勧めたが、お金にならないからダメ!と・・・
(7) 収入・・・母、本人の年金収入のみ
(8) アセスメント・ニーズ
母、姉・・・曖昧 ちゃんとアセスメントが取れない。
本人・・・障害児施設 → 養護学校 → 卒業後就労 今は無職 ニーズ:仕事をしたい!
清潔保持ができていない。
②関係者との情報共有
(9) ケア会議:母は自宅で暮らせるよう・・・とりあえず、ごみを片付けよう!
役割分担:包括支援センターは、母の定期訪問
相談員は、本人支援 通所支援も・・・
保健師は、姉の支援
社協の入浴支援
③家族の調整
(10) 母の緊急保護
家はゴミ屋敷・・・姉「宝物があるから触らないで!」母と姉は軒下で寝ている状態。
雪の降る時期、通報 → 母の緊急保護(警察権限)→ 施設入所
④居住場所
(11) 姉と二人暮らしが始まる。 本人の年金収入のみ 姉は一向に働かない。
行政の避難用の常備食で対応することも・・・(経済的虐待) 週一回入浴サービス利用
「家から出よう!」 働いておいしいものが食べたい!
以前、たばこで火災を起こしている。
→ ことごとく断られたが、たばこを吸わないことを条件にGHへ・・・
3.今後について
(12) 障害のある人を守るための5か条
➊ 「おかしい」と感じたら迷わず連絡する。
➋ 虐待をしている側の「自覚」は問わない。
➌ 障害のある人本人の自覚は問わない。
➍ 家族の意向と障害のある人本人の意向は異なる場合がある。
➎ 虐待はあなたの周りでも起こりうる。
(13) まとめ
今回の事例は、虐待をしている側と本人の、両方の自覚は問わないケース
現在は、GH → B型に通所 生活リズムの整った生活を送っている。
障害のある本人が、その人らしく当たり前の生活ができるよう、見守っていきましょう。
(14:00)
【質疑】
近藤さん(司会):とてもフットワークのいい地域だと思い、羨ましく思った。
Q.福田委員長:虐待の情報収集には、個人情報の保護が壁となる。 そういうことを
見つけたら、私たちに何ができるのか? 事件にならないと、警察も動けない。
A.新居さん:生活の中で、どこが虐待かはわからないと思う。「あれ?」と思ったら、
窓口へすぐ相談したらいいと思う。市の窓口が考えて、いい対応をしてくれると
思う。
【新名先生の総括・アドバイス】
お二方の話、とても生々しい話だった・・・
・村上さんの話「成年後見制度」
相続・・・兄弟間のトラブル
生命保険の受け取り
金融機関が「後見人をつけろ!」と言ってくる時代
名前が書けると、だまされることが多い。
中○銀行でも、婚約者が預金を下ろしてトラブルに・・・
しつこく本人確認・・・銀行がリスクを負いたくないから!
親だから、子だから・・・法的には×
「本人以外には、お金を渡さない!」という銀行は、ある意味正解!
本人確認書類も、偽造できる世の中! インターネット取引にも詐欺が・・・
☆ 一身専属 ・・・結婚 離婚 ← 後見人でも介入できない。
医療対応・・・本人しか決められない。
「説明・同意」:家族だからいいとはどこにも書いていない。もめないためのもの。
親でもわからないものを、本人の意思にしてもいいのか?
家族のような機能を、後見人に求めるのはいかがなものか?
→ 家族に負担をかけるのは、やめよう! 家族にもわからないことがある。
家族の思いは大切に・・・
支援者、スタッフの目もすごい!
役割があるということの重要性
その選択、きっかけに目を向けてくれるスタッフの存在はありがたい。
長年、ポット係(お湯を注ぐ)の重度の方
一緒に考えてくれる人を、どう見つけていくか?→ 意思表示、意思決定に大切なこと!
イギリスでは「本人には、意思決定の回復は0%ではない」というスタンス
本人の最善の利益・・・支える人が他の人よりたくさんいるということ!
家族だけに頼らないこと!
☆ 無理解な地域でも・・・
1人・・・無条件に動いてくれる人 当事者の声が分かる人
8人・・・声がかかったら動いてくれる人 考えてくれる人
1人・・・何をやっても動かない人
→ この動かない1人にこだわっていたら、あと9人も動いてくれない。
家族からの情報は、本当に大事!
今考えて、今から行動していかないと、限りある人生。
どんな人も巻き込んでいくには、どうしたらいいのか?
後見人制度の費用
20,000円位/月 本人の財産から・・・岡山市と玉野市以外は、市が負担してくれる。
(岡山市・玉野市は、市長が申立した人のみ負担)
若干、補助・保佐が多い。
本人が「イヤ!」・・・本人の意思
やっていいか悪いかは別! 障害者だからといって、許されないこともある。
でも、障害者だから、頭ごなしに「何でもかんでもダメ!」というのはダメ!
・新居さんの話「障害者虐待」・・・表に出にくい。
自分のことは自分で考えていこう!→ いいか悪いかをきちんと考えていく場がいる。
→ これがベース!
一緒に考えていく人を、どう見つけていくか?
一緒に考えていく場を、どう作っていくか?
市町村にも働きかけがいる。→ みんなの声がなければ、
うちの市には、必要ないと思うのが行政!
本人がどう感じているか? 虐待と思ってないから、虐待ではないという事ではない。
誰が見てもおかしい状態は、踏み込んでいくべき!
人は、誰にも会わずには生きていけない。 人に会うことにリスクがある。
でも、楽しく生きようとしている。→ それは、障害者も同じ!
☆ 伴走という考え方
ホームレス支援もしている。 ホームレスは、社会が障害となっている。
セーフティネットは網・・・最後はホームレス → 刑務所に行った人もいる。
関わっている人間にも、どこに向かっているのかはわからない。
ずっと伴走していくだけ・・・一緒に、ずっと伴走していく人を、どう作っていく?
今は、家族・・・家族 → 支援者・・・伴走者は変わっていく。
→ これを探していくことが、これから大事!
本人の意思表示を記録に残す。← これがあって、成年後見も生きてくる。
後見人は、福祉の場で、唯一伴走者と言えるもの。
一緒にやっていく。早く付けてやるのも、一つの手。
権利条約に引っかかっていることも、これから考えていくべきこと!
【質疑】
Q.玉野 法人後見に関わっている。母一人子一人というケースが多い。
母が亡くなり、相続・・・どこまで関わっていく?
A.相続手続、葬式、身の回りのこと・・・ずっと関わっていく。本人が死ぬまでが後見。
葬式の代理も権限はないが、やっていくべき!本人への説明も・・・大変だろうが・・・
(14:44) 終了
福田委員長より 閉会