第4分科会 テーマ「高齢化・重度化」

 会 場 1階 大ホール  参加者数 158人

貴重提案者 美作大学社会福祉学科教授   小坂田 稔
運営責任者 岡山県手をつなぐ育成会広報調査委員会   宮川 健吾
司   会 岡山県手をつなぐ育成会広報調査委員会   市原 京子
司   会 岡山県手をつなぐ育成会広報調査委員会   岸  順子
提 案 者 いづみ寮地域生活ホームサービス管理責任者 岡田 光生  
提 案 者 岡山県手をつなぐ育成会広報調査委員会   佐熊 喜恵
記 録 者 岡山県手をつなぐ育成会広報調査委員会   山崎 香織
 
 宮川運営責任者から、分科会の運営上の諸注意があり、市原・岸さんの司会で開会。

基調提案「障がい者の生き生きとした高齢期づくりに向けて~暮らしを支える地域包括ケアシステムとこれからのあり方~」
美作大学社会福祉学科教授 小坂田 稔 氏
配布資料
提案要旨
1 はじめに~進む我が国の高齢化
(1) 2025年問題という課題
・1970年代から高齢化(7%)が始まった。現在は25%。
・今年、段階の世代が皆65歳以上になる。2025年にはこの人たちが後期高齢者となると一気に増加する。超高齢化社会に。
(2) 進む障がい者の高齢化と様々な課題
・障がい者も高齢化し、親亡き後を見据えた生活のあり方が課題に。
・福祉サービス利用での独居生活の持続が困難。家族介護者の要介護による負担増加で暮らしが困難
・個別支援ニーズの増大と施設での集団生活の難しさ。
・その人らしい暮らしの実現を目指す中で、高齢障がい者の所得保障、住まい、社会参加、地域との関係、介護保険制度と障がい者福祉施策との関係からくるサービスの利用継続の課題をどうしていくのか。
・地域支援や在宅支援が問題となり、こうしたことが増えることが簡単に予測できる。
2 改定介護保険法の内容と影響
・認知症の人がこれから増えてくる。
・改正で関わりのあるのが「要支援者向けサービスを市町村に」と「特養入居を要介護3以上に限定」
・介護保険制度を65歳以上の障がい者の利用が伸びていくことが予測される。また、障害者総合支援法の利用も年々増加。
3 障がい者のいきいきとした暮らしを阻む3つの壁
(1) 意識の壁
・「個人の世話になりたくない」
・「福祉サービスを使うのは世間体が悪い」
・「サービスを利用させるのは親不孝だ(子供がいるのに、嫁がいるのに)」
・「私のためにみんなに迷惑をかけて申し訳ない」
 さらに地域住民の意識の中に、なお根深く現存している根深い差別・偏見意識・・・それが支援の壁になる!
(2) 情報の壁
・「どのような制度サービスがあるのか知らない」
・「どこに相談すればいいのか分からない」
・「いろいろな情報がありすぎてよく分からない」
・「情報を知らないということを知らない。
 多くの人が情報を持たずに生活している。知らなければ・分からなければ利用をしないし、利用できない。
(3) 制度・サービスの壁
・「利用したくてもその制度やサービスがない、あっても量や種類が十分でない、せっかく利用しても質が悪い」
・「様々な援助者が連携せず、縦割り支援を行う」
・「利用に際しての利用車が申請しないと援助が開始されない」
・「専門性がなく、ニーズを的確に把握できなかったり、理解できない」
 このため利用したくても利用できなかったり、せっかく利用しても「二度と利用しない!」ことになる。
 ・社会福祉法人としての事業はしていないので、自ら解散。以前は差別と偏見が激しかった。結集して制度を作り上げた。①
4 いきいきとした暮らし支援に求められるシステム作り~障がい者版「地域包括ケアシステム」の構築
(1) 障がい者版「地域包括ケアシステム」とは
・いわば、高齢者の地域包括ケアシステムを障がい者用として構築しようというもの。美作市の事例で説明。
(2) システムに込めた8つの機能
ア ニーズの早期発見機能(意識の壁、情報の壁、制度、サービスの壁の解消)ー眠るニーズを少しでも早く、確実に見つけ、起こしていこう(早期発見体制の確立)
・待つのではなく、見つけていく姿勢
・多様な発見方法(地域住民、専門職などとの協働を(民生・児童委員、福祉委員、各種専門職、企業等)
・調査活動の実施
・福祉台帳、世帯台帳などの作成
・発見ニーズの最終連絡先を決める(総合相談のワンストップ)
イ 早期支援(信頼関係づくり)機能(制度、サービスの壁(申請主義)の解消 )ー要援護者を少しでも早く支援しよう
・ワーカーが積極的に地域に出ていく(アウトリーチの実践)
・地域住民との協働関係づくり
・発見できた後、早期支援をいかにして可能としていくか(タイムロスの解消)
・緊急連絡カードの作成と活用
ウ ネットワーク機能(制度、サービスの壁{縦割り支援}の解消)ーたった一人や1つの機関、団体ではなく、みんなで知恵と力を出し合おう
・3つの力のネットワークづくり(3本の矢の協働)
・地域住民と専門職とのネットワーク・・・小地域ケア会議、近助個別会議の設置
・インフォーマルサポートのネットワーク・・・地区社協活動の推進
・専門職(機関・団体)同士のネットワーク(情報、支援目標、内容の共有化。連携体制の確立ー保健・福祉・医療ネットワーク・専門部門対応会議
エ 困難事例への対応(コンサルテーション)機能(制度、サービスの壁{サービス、支援の質}の解消)
オ 社会資源の活用・改善、改良・開発機能(制度、サービスの壁の解消)ー今あるものはしっかり使おう、足らないものはみんなで作ろう!
・社会資源を知っているか、共有しているか・・・社会資源情報マップの作成
・地域診断や地域の履歴書づくりの推進
カ 福祉教育(共育)機能(意識の壁の解消)ー「共に生きていく」の地域住民意識を育てていこう!
・問題意識の共有をどう進めるのか?(これが全ての活動の原点)・・・福祉講演会開催(住民座談会、三けん活動{探検、発見、ほっとけん}、支え合いマップづくり
・地域住民と専門職との日常的協働活動をどう進めるのか?(住民主体活動の展開、連携体制の確立ー地域組織化と活動の推進
キ 活動評価機能(制度・サービスの壁{サービス・支援活動の質}の解消)ー活動の内容が的確な支援となっているのかを継続的に評価していこう!
・援助活動、事業をいかにして効果的に行っていくか?(活動、事業評価体制の確立)
ク 専門力(性)育成・向上機能(制度・サービスの壁{サービス・支援の質}の解消)ーシステムが人を育てていく1
5 これから求められる支援
(1) 相談支援への支援
・まず、総合相談体制の確立。
(2) 生活支援
・介護支援、生活支援、住居支援、健康管理・医療支援
(3) 介護予防
・障がい特性を踏まえた介護予防プログラムの開発
・口腔衛生管理等の健康管理対策
・OT,PT,ST及び地域介護予防サポーターの障がい特性への理解
(4) 地域支援
・社会福祉協議会職員、民生委員、愛育委員、福祉委員、地域住民の理解促進
・ふれあいサロン、小地域ケア会議への参加
・地域自立支援協議会との連携
・支援者が訪問して必要な見守りや支援につなげるアウトリーチとネットワークづくり
ケ 権利擁護支援
・消費者被害や金融トラブル、詐欺等への対応
・権利擁護サポートセンターとの連携
・日常生活自立支援事業の活用、成年後見制度の利用
6 これからの社会福祉のあり方と地域福祉
・住民が主人公の時代が始まっているーー地域福祉の推進、住民主体による福祉の推進
・あらためて考える「障害者総合支援法のめざすもの」
7 おわりに
・人は安心できる場所でこそ輝く!!

提案1「グループホーム利用者の高齢化について」
旭川荘 いづみ寮地域生活ホーム サービス管理責任者 岡田光生 氏

1 旭川荘のグループポーム紹介
・バックアップ施設が8施設。グループホームが38ホーム。
2 いづみ寮地域生活ホームの現状
・いづみ寮の地域生活ホームは7ホームで利用者が男性29名、女性が25名。
・平均年齢が平成27年11月現在で53.2歳。平均障害支援区分が4.04
3 グループホーム利用者高齢化の課題
・70代4%、60代40%、50代12%、40代36%、30代8%となっており、高齢化が進む。
4 事例紹介
(1) 認知症と診断されたNさん
・60歳 男性、障害支援区分 6
・グループホーム利用歴 平成12年4月~現在も利用中 (約15年)
・日中はいづみ寮生活介護を利用している。
・以前はバスを利用して通所していたが、現在は生活介護の送迎サービスを利用している。
・【経過】
H22年 ・物忘れが増える。脳ドックの結果、脳の委縮が認められる。
     ・心療内科を受診し、服薬療法を開始する。
     (将来の介護保険サービス利用の可能性も検討を始める)
H24年 ・日中活動の中で、トイレの位置やロッカーの場所がわからなくなる。
     ・ホーム内において洗濯物たたみなどの特定の行動を繰り返す。
H25年 ・場所がわからずに立ち往生することが目立ち始める。
     ・歩行能力の低下、つまずき、転倒が徐々に増加する。
H26年 ・左手首の骨折が判明。本人の記憶がなく、いつ骨折したのか詳細不明。
     ・最寄りのコンビニエンスストアへ行った際、帰り道がわからなくなる。
     ・交差点の横断歩道を渡れず、周囲の人に誘導していただく。
・【対応策】
 ■H26年2月まで (単独でホームから外出をしていた時期)
 ①GPS機能付き携帯電話の所持
 ②衣類等に緊急連絡先の明記
 ③地域の見守りを依頼
  ⇒交番、よく立ち寄るコンビニ、スーパーなどに事情を伝え、
  「あれ?」と思った時は、いづみ寮へ連絡をいただけるよう
   お願いする。
 ■H26年3月より  (単独での外出に不安が出始めた時期)
 ①移動支援(ガイドヘルパー)の利用時間増加
 ②休日支援者の配置        
  ⇒休日の隙間ない支援体制を整える
 ・【ご本人がまだできること】
 ・自分で箸を使用して食事ができる。
 ・屋内であれば自分で歩行し移動することができる。
   (夜間の一人での移動も可能)
 ・トイレへ行って排尿、排便が概ね自分で行える。
  (後始末は難しい)
 ・洗濯物干しを自分で行える。
 ・衣類は見守りと一部介助があれば着脱できる。
(2) 施設入所サービスへと移行したIさん
・60歳 男性、障害支援区分 4
 グループホーム利用歴 平成20年4月~26年11月 (6年8ヶ月)
 グループホームから施設入所へと移行。
 日中については、就労継続支援A型を利用していたが
 いづみ寮生活介護の利用に変更。
・【経過】
H24年 ・足元のふらつきが激しく、転倒も見られ始めたため、
      いづみ寮近く(徒歩2分)のグループホームに移動する。
      (⇒当初自力歩行にてA型事業所へ通うが、年度途中より
        介助を要した。)
     ・歩行能力維持のため、リハビリ通院を開始。
H25年 ・歩行時のふらつきから転倒し、怪我も増え始める。
      (⇒常時歩行時の介助を行なう。ホーム内では伝え歩きにて移動)
     ・安全面を最優先し、10月にA型事業所から生活介護の利用に変更。
H26年 ・支援者介助中でも転倒することが増え始める。
      (⇒移動時には車椅子を利用する。ホーム内では伝え歩きにて移動)
     ・夜間、ホームにて転倒し、怪我をすることが頻回に起こる。
      (⇒安全面を最優先し、12月に施設入所サービスに移行する)
5 今後の課題と取り組み
・「このままグループホームで生活したい」という本人の思いを少しでも長く叶えたい。
 しかし、現状のいづみ寮や他の旭川荘内のグループホームでは対応が難しい。
 ○ホーム内居住空間のバリアフリー化が十分ではない。
 ○現状では夜間の対応が十分ではない。 (24時間対応ではない)
・夜間も安全に、安心して暮らせるグループホーム
⇒夜勤もしくは当直体制の整備(24時間対応)
⇒居住空間の整備(ホーム内のバリアフリー化)
・利用者ニーズに応じた適切なサービスへの移行
⇒相談支援専門員との連携
⇒入所施設サービスや介護保険サービスへの適切な移行
           ⇓
        見極めが難しい…
・旭川荘の取り組み
 各入所施設、グループホームにおいて、高齢化については直近の課題となっている。
⇒定期的に高齢者支援の研修会を開催。
 旭川敬老園からの助言を受け、各事業所の事例報告や対応について検討している。また相互情報交換の場も担っている。
・おわりに
 誰もが迎える「老い」をどのように思い、どのように過ごしていくのか…
 利用者の皆様が「ここでよかった~」と思って過ごせるように…

質疑
Q1 家で最後まで過ごすのは難しいだろうか。
A1 相談支援の方に対応してもらうこと。グループホームの空きはない現状にある。
Q2 初めの事例は支援区分が6で、バスに乗って買い物がどうしてできるのか。うちの子供は無理なので。
A2 できていた時は、支援区分が4であった。6になった彼が今できるのかといえば無理だと思う。
Q3 指導員の努力がすごくあったのではないか。
A3 本人が行きたがっていたので、本人の思いを大切にした。
Q4 グループホームで夜勤があるというが、火事や地震の時はどうするのか。
A4 火災報知器があり、全館に連絡が行く。消防にも通報できるようになっている。100%安全で大丈夫だとはいえないのが現状である。
Q5 スプリンクラーの設置はどのようにしているか。
A5 7施設のうち、5施設には設置している。

提案2「高齢化・重度障害者の福祉」
広報調査委員会 佐熊喜恵 氏
1 新見市手をつなぐ育成会・親の会の歩み~成り立ちから現在まで~
・昭和52年6月12日に30人で結成。4人のお父さんが集い、始まった。
・親子遠足などの活動を行っている。
・昭和62年4月に神郷の園という施設ができた。現在、60歳以上が40%で最高齢は83歳
2 今年のアンケート実施の集計結果
・本年度広報調査委員会で高齢化について7~8月に会員のアンケート調査を実施。369 人の回答があった。
・10代の本人の保護者が127人と若い親が多く回答していた。
・高齢障害者の福祉施策に関心や不安がある人が63.4%
・障害のある人が高齢になったときの住まいについて、自宅でできるだけ家族同伴と回答された人が53.6%
・所得保障については、将来、年金や工賃だけで、高齢になれば医療費、成年後見などの費用など支出が増え、まかなえるだろうか。
・親亡き後の住まいへの不安。一人暮らしへの支援は?施設入所はできか?グリープホームの数は?収入が少ないのに経費は足りるか?
3 新見市の現状
・行政としての取り組み
・事業での取り組み
・新見市障害者自立支援協議会の取り組み
4 今後の課題
(1) 住み慣れた地域での生活を続けるためには
・親子で入れる施設が岡山にできているとか。増えるように陳情したい。
(2) 移動手段
・過疎になり、バス路線が廃止。交通手段がない。この対策を
質疑
Q1 療育手帳のB。医療費の負担は3割。毎月医療費が二万円もかかる。2割になるよう育成会で陳情してほしい。

まとめ 小坂田さんから
・グループホームは十分には保障されていない。支援員のいない時間がある。本来なら宿直がいる。認知症のグループホームにはきちんと支援員が24時間いる。
・火災の対策でスプリンクラーの設置が防火対策として必要。今は義務ではない。費用もかかる。
・グループホームは地域での暮らし。地域住民との関り合いはどうするのか、関係づくりが必要。
・認知症の方の行方不明でおまわりさんが見つけて助かったというが、もし見つけられなかったら困り続けてたのでは。地域のみんさんの理解と見守り。知的障害の人も含めた地域福祉活動を。それを支援するのが社会福祉協議会。
・地域でこれらを話し合う場がいる。参加して声をあげてほしい。
・お金の管理として、成年後見。市民後見や法人後見で対応するようになる。
・地域で最後まで暮らせる仕組みを作りたい。一人暮らしを支えるソーシャルネットワーク。必ず作れるし作らなければならない。

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