障害者差別解消法について考える研修会

平成26年11月6日(木)きらめきプラザ4階401会議室において、午後1時から3時半まで県内の知的障害者相談員と育成会会員など約60人の参加により、「障害者差別解消法」についての研修会を開催した。

1 開 会

 

 岡山県手をつなぐ育成会の徳田会長より、研修会開催の趣旨と当日の講師の紹介を兼ねて開会あいさつを行った。

2 講 演

 

 演 題「障害者差別解消法と育成会活動」

 講 師 毎日新聞論説委員・内閣府障害者政策委員

         野  沢  和  弘  氏

・まず、戦後の福祉の考え方から、近年の障害者福祉制度の成り立ちについて述べられた。
・太平洋戦争の戦禍により戦後対策として戦争孤児救済のため児童福祉法が、傷痍軍人対策で身体障害者福祉法が整備され、障害者は家庭で保護養育することが当たり前で国家や行政が関わるものではないと考えられていた。
・海外では、北欧で国が高福祉の考えで支えてきていたし、アメリカでは企業が支えていた。
・私としては、家族中心の福祉というのは気に入っている。我が子に自閉症の長男がいて、時々パニックになり私や家内の手が傷だらけになることがある。
・これは、決して長男が乱暴者ではなく、わがままではない。むしろ逆だと思う。いくつも我慢して自分の思いが伝えられなかった結果である。
・世間で見るとこういう意思疎通のとれない子どもは誤解されやすい。この子どもたちを家族が支え合うことはとても良いと思っている。
・でも家族だけでやれといわれても大変である。
・以前デンマークに行くと、障害児がいて母親が家で面倒をみるというと年間400万円が支給される。
・ただ、母親もずっと関わり家庭に縛られてよいのか、本人にとってもどうかと言う問題がある。
・そして、この日本では家族だけで支えることが無理になっている。
・高齢化が進んできていており、若い年代層の減少が激しい。しかも都市圏での傾向が著しい。
・その後、障害者対策として家庭での養育困難に対して措置として入所施設の整備されてきたなど、これまでの障害者福祉の経過を話された。
・次に、近年の障害者虐待事件など、ご自身の取材経験も引き合いにして述べられ、最近の障害者関連法整備が行われた。
・そして、本題である障害者差別解消法の内容について説明があった。
・この法律では、障害者が働きやすく生活しやすいように壁を取り除いて行くのが合理的配慮ということであり、それらの解決を関係者で話し合いながら行う。
・特にこれからの育成会活動として大切な点として、障害者差別解消地域協議会が設置されるが、この協議会を育成会が主体的に関わって行かねばならないと強調された。
・しかも、県段階でなく、市町村などに設けなければ効果が期待できないなど、具体的で分かりやすいお話であった。

 質疑
Q1 障害者の差別解消のためには、本人を多面的に理解する必要があり、そのためにも支援ファイルなどの記録が大切であると思うがどうか。
A1 障害により理解されにくいことが多々あるが、記録されていれば後になって判明することがあり、いろいろな角度で記録を残しておくことは大切でその記録に基づき対応することが求められる。
Q2 移動支援で、兄弟を抱えており、その上出産が控え、送迎ができないので、その支援を行政にお願いするが、制度の壁を理由に応じてくれない。どうすればよいか。
A2 障害福祉制度は、国民の理解の上に成り立ったものであり、際限ないサービス提供には限界があるが、粘り強く理解していただき少しでも改善できるよう努力するしかない。
Q3 障害者差別解消協議会の設置について、既存の虐待防止協議会や自立支援協議会がある上に設置することにはいろいろと困難が伴い、兼ねる形で設けられるのではないか。
A3 確かには次々と設置することは難しいので兼ねて設置するようにはなるだろうが、自立支援協議会は事業者側が参画して動いているので、虐待防止や高齢関係と一緒設置して行くことも考えられる。
その他、数点の質疑にも丁寧にお答えいただいた。

3 閉 会

 岡山県知的障害者相談員協議会の澤田副会長さんから、講師へのお礼を兼ねて閉会挨拶があり、散会した。