2016年度育成会フォーラム
2016年度 育成会フォーラム
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平成29年3月3日(金) 13:15~16:45
東京八重洲・鉄鋼会館 801会議室
開会挨拶
全国手をつなぐ育成会連合会 村山副会長から昨日の行説明会、午前中の全国会長会に引き続いてのフォーラムということでお疲れのことと思うが、メインと もいうべき育成会活動についてのもので、大勢のみなさんにお集まりいただいたことに対して感謝を述べ、講師のみなさんも話し合われる内容も中身の濃いものになる と思う。今日の協議の内容が、明日からの各地域の活動に役立たせていただくことをお願いして開会の挨拶とされた。
基調講演1 これからの育成会運動 配布資料
全国手をつなぐ育成会連合会会長 久 保 厚 子 氏
・育成会は、立ち上げて60年余となった。障害者団体としては老舗中の老舗である。
・国の方でも障害者福祉を代表する団体として扱っていただいているのがその証であると思っている。
・社会的に障害者の理解ということがなく、偏見や差別の激しかった時期から長年活動してきて社会を変えてきたり、法律を作ってきた団体である。
・私たちには、そういう育成会活動をしてきたという自負があると思っている。
・知的障害者福祉法、障害者扶養共済保険制度、障害者基礎年金、JR運賃割引、最近では公職選挙法の改正など。
・これらは育成会が中心になってやってきたことである。
・成年後見制度改革においても弁護士、司法書士という専門家はいるが、利用者である当事者としては我々と高齢者団体のみである。
・しかも我々の方が高齢者より長い期間利用することになる。そういったことも主張して改善をお願いしている。
・これから内閣府では欠格条項の見直しをして行くと思う。これについても各省庁から反発があるので、育成会で頑張って欲しいと言われている。
・我々の活動は東京から全国に広がって、全国のどこにでも育成会があり、その育成会が作業所や施設を作り、我が子の安心安全を求めて活動を続けてきている。
・最近の15年余りは移り変わりの激しい時代であった。制度が色々と変わり、親の会で我々も必死になってついてきた。
・社会福祉の基礎構造改革から始まって経済の不調、少子高齢化、過疎化などの社会問題の多様化、複雑化してきて、私たちを取り巻く生活や福祉の現状も変化してきており、親の会の環境や様子も変わってきたと思っている。
・福祉サービスが整備され、情報化社会が広がり、人との繋がりが薄くなって組織所属の依存心が薄れてきたのではないか。
・若い人が育成会の必要性や魅力を感じなくなった。ネットでいろんな情報は取れるとも言われるし、会に入ると役を持たされるとか、動員をかけられるなど、自分たちにメリットがなければ会費を払うことももったいないと思っている。
・ヤマユリ園の事件から、私どもの機関誌「手をつなぐ」を注目されている方がおられ、購読したいと申し込まれる方が新たに何十人も増えた。
・若い方は、しばらく見てくださるがもういいかと思うとさっと止めてしまう。新規の方で止めて行かれる方が結構いる。
・こういう傾向は、若い人には何にでもあることである。ネットで申し込み止めて行く社会であるので、こうしたことが当たり前と認識する必要があると思った。
・組織の実態とニーズについてであるが、急速な時代の流れに対応できず、これまでのやり方やあり方を続けようとする傾向にあり、結果として地域のニーズとの間にギャップが生じてきている。
・これが今の時代であり、このことは育成会だけに留まらず、学校や地域、会社、財界などあらゆる組織にそのような局面にあると言える。
・育成会組織の意義としては、我が子の日々の暮らしを思い始まった会であり、自分たちの組織の歴史や実践を大切にしながら、今の時代や社会・暮らしを見極めて役割を果たすことができれば、障害のある人が市民とともに社会参加するための推進役になれるはずである。
・そのためには自己変革が必要である。実行するためには、時に自己否定も伴う。
・若い親の入会がないとか、会員が高齢化し減ってきた、役員を代わってくれる人がないと言われることは、全国すべてのところからも聞くし、他の障害者団体からも。
・日身連は、もっと老朽化してきている。そのためにも内部の改革をしてかねばならないと思っている。
・手をつなぐの冊数も減少しているし、正会員の会員数も減っている。
・実績があり、長年活動している組織はどこの組織または会社でもそのままでいると自然に老化していく。
・そのための対策としては三つ。
・老朽化を受け入れる。少しは抵抗して無駄な抵抗はしない。そのままでは、消滅する。
・リセットする。個人や器ではなく、基本的な考え方や価値観を転換する。そのためにも世代交代する。組織の若返り。
・改革する。新結合、新基軸するとか、解散し新たに立ち上げる。連合会はまさに。
・各県市町村の育成会としては、二番目のリセットしていくことが大切であろうと思っている。
・今、立ち上がられなければならない。そのためにも、まずこのままで良いかと気づくこと、気づいたら立ち上がること、それに共感したら支え合うこと、そして決断することが大事である。
・自分たちの年は大過なく過ぎて欲しいという意識がどこかにある。だが、今こそ手をつけなければ今よりもっとひどい状況になるという意識を持たねばならない。
・自分たちの組織の意識を変えることすらできなくて、共生社会を求めようとするなどの社会の改革などできるはずがないと思う。
・強力なリーダーが長年おれば、その能力がいかに優秀であっても、他の役員や会員は「待ちの姿勢」になり育たない。
・戦略的に物事は考えていこうということで、戦略的思考を(意思決定)
・まず、進むべき方向性とシナリオを決める。
・進むべき方向を決める。
・決定のプロセスを重視する。
・長期的なものの見方をする。
・未来のリスクに注意を向ける。
・大きく、重要な問題に注意を絞る。
・複数の代替え案の中から選択する。
・育成会の理念は、障害のある人たち(我が子)の幸せを実現するための活動であるはずである。何のための、だれのための育成会活動か。私たち役員のための会ではない。
・障害のある人の人権を守り、安全安心して暮らせる社会を作ろうというのが育成会の理念である。
・したがって、組織の在り様は、その理念の実現のために、フットワーク良く、柔軟に、新しいアイデアで対応できる体制が必要である。若い親のニーズに気づき、新たなアイデアで対応できる体制かをもう一度確認して欲しい。
・最後に、糸賀一雄氏の言葉を引用し提言を締めくくる。
基調講演2 これからの育成会運動を取り巻く社会情勢 配布資料
毎日新聞 論説委員 野 沢 和 弘 氏
・これからの育成会を取り巻く状況ということでお話ししたい。
・日本のこれからの社会はどの様に変わっていくのかわからない状況になる。
・基本的には日本は人口減少。この人口減少の中でどの様に社会保障の財源と働き手を確保していくのかというのが最大の問題と言っても良いと思っている。
・江戸時代の人口になれば良いという人もいるが、その頃には福祉がなくてもやれた。しかし、現代の世界情勢でわが国だけが極端な高齢少子化で人口減少が進 んでいる国では福祉が不可欠である。江戸時代では大家族であり、地域がしっかりしていた。今は両方がない。だから公的福祉サービスが必要なのである。
・1940年代では、日本の平均寿命は50歳代であったのが、医療保険政策が進んで世界に冠たる長寿国になった。
・徒然草を書いた吉田兼好が、人間は40歳くらいで死ぬのがちょうど良いと言っていた。2016年では平均寿命が女性86.3歳、男性が80.5歳となった。
・本川達雄という生物学者が動物の全て心臓が15億回鼓動すると死を迎えると言っている。人間が心臓15億回で何歳まで生き残れるかというと42歳だそうである。吉田兼好の言っていたことと符合する。
・最近、日本の老年学会がこれまで65歳以上を高齢者と言っていたものを、65~74歳を准高齢者、75~89歳を高齢者、90歳以上を超高齢者と定義を 変えた。現代人の心身機能が5~10歳も若返っている。健康寿命がこれだけ伸びてくると社会にまだ貢献できる可能性が見えてくる。シニア層にもっと参画し てもらえる様にしてはと思っている。
・昨年11月にエマニュエル・トッドという人口学者にインタビューした。ソ連の崩壊や9.11、イギリスのEU離脱などを予言している人。
・日本の社会福祉を聞こうということで会った。
・彼は日本ほど恵まれた素晴らしい国はないという。日本のたった一つの問題は人口である。格差は広がっているが、テクノロジーの面では世界の上位にいる。 出生率の低さ以外は本当の深刻な問題ではないという。フランスを見てくれ。不景気、テロはあるし、働かないが、ずっとフランスは残る。
・日本は30年後に無くなっているかもしれない。
・都市部では人口が集中しているが、地方ではどんどん過疎化している。人口対策を行っても反映するのは20年後。間に合わない。気が付いた時は遅いと彼はいう。
・日本では、親に対する子供の負担、子供に対する親の負担があまりに大きい。そのために出生率が低いのだと。介護とか、子育てを公的な支援により広く薄くして手厚くしないと人口は増えないと。
・現在の出生率は1.4くらい。人口維持のためには、2。安倍内閣では1,8を目標としているが、これでも人口は増えない。
・戦前では、農業が中心で子育て、介護は家族で賄ってきた。現在では雇用労働が9割で核家族となり、家族での介護、子育てが難しくなっている。
・現在の若い世代では、非正規雇用など待遇が悪いため子供を預けて共働きしても生活が苦しい状況をもっと理解していくことが必要。
・安倍政権では働き方改革を進めている。日本の正社員の生産性が低い。生き方そのものを変えていく様になるのではないかと思っている。
・これが福祉の現場にも波及してくるのは間違いないと思う。
・障害者支援が2000年以降かなり変わってきた。目まぐるしい制度改革が行われた。
・変わったこととして、まず、予算が大幅に増えた。障害者の予算はこの10年で3倍に増えている。
・利用者増、発達障害が増えている。これは社会増である。自然増としては高齢出産に伴うもの。医療的ケアの必要な人や行動障害の人は病院や施設に入所して いたが地域で暮らす様にまだ少数ではあるがなってきた。そのために親の会の求心力が衰えてきたことにもなった。しかし、これからの時代に必要な親の会にし なければ。
・新しい時代の事業者が増えてきた。以前は、親の会が無認可作業所を立ち上げてきていたが、今は、営利企業が参入し、ビジネスでする人も出てきている。自立支援法以降はバブル期である。これがいつまでも続くとは思えない。バブルから成熟期に入ると思う。
・選別が始まると思う。予算増も限界。放課後デイなど見てわかる様にサービスが飽和状況になり淘汰されてきている。利用者の方も権利意識が高まってくるし、地域社会での生活困難者の問題が顕在化してきて我々が地域社会を支えていくことが期待される様になってきている。
・これからは、障害者のアイデンティティーを変えたいと思っている。福祉サービスを受ける人、権利擁護を守られる人だけでなくて、地域を支える人に変えていきたいと思っている。そうすることで地域社会が改めて障害者の存在を認めていく様になるのではないか。
・選択と淘汰ということで限られた「福祉資源」をどこに投入するかということが報酬改定などの中で議論が始まった。
・重度障害者(行動障害、医療ケア、高齢者)とか、複合困窮(貧困、子供・高齢者の孤立)に行政は目を向け始めており、限られた予算はこれらに投入しかない。
・障害程度の区分の軽い人が相当にグループホームへ入所しているが、これの単価は低くし、重度対象の方へ傾斜配分しようと考えている。
・地域においては、障害者のサービスでだけではなく高齢者のサービスも併用して行う方向で国は検討。「我がごと・丸ごと」地域共生型福祉なるものに。
・介護福祉士、障害者福祉士、保育士などの資格を取りやすくしようとベースになるカリキュラムも統合しようという方向で改革が進められている。
・手のかからない利用者を囲い込んでサービスを行なっている事業所では、職員が育たないし、行政からの信頼も薄くなる。放課後デイや就労A型など脱法的な制度の悪用しているものが淘汰される。
・福祉にもこれからは「働き方改革」が必要。会議が長過ぎ、多過ぎ、人数も多過ぎ、形式的アリバイ的会議が多いなどの是正。企画を実現するにはいくつもの 部署の承認を取り付けなければならないとか、結果より努力を評価する傾向とか、英語やITを使いこなせないと評価されないなど。
・福祉現場の問題として、人手不足と非効率をどうするか。
・請求事務に時間と人手をかけすぎる。
・朝礼で2時間喋る施設長
・連絡帳を書くのに時間がかかり、かつ稚拙
・ケース会議をだらだらやる
・送迎の非効率
・掃除など直接支援以外に時間かけ過ぎ。
・福祉の「働き方改革」として先進的な事例として
・掃除をシルバーさんに外注。
・送迎をタクシー会社と提携
・スカイプで遠距離事業間の会議
・学生アルバイトの育成と活用
・こうしたことで職員を雑務から解放し、より専門性の高い仕事に集中させる。
・職員の研修時間を確保する。
・今後の福祉にとって大事なことは人材を育てること。
・厚労省では現場を視察調査し、現場の先行的な取り組みを見て可能な限り制度化しようとしている。
・であるので、事業所も制度がなくても色々と工夫して取り組み、それを行政に訴えていくことが必要。
・支援の改革としては、また支援者のアイデンティティーとは、職員を雑務から解放して、職場の生産性を高めるのは何のためか、より難しく高度な支援ができる様にするには、経験、カン、コツ、根性や優しさだけでなく、科学的根拠に基づいた支援が肝要。
・福祉の役割が限定化され、公的財源もより社会的福祉の必要なものに傾斜される。
・職員の専門性を高め、社会的立場や待遇の向上を図り、利用者の満足度と職員のやりがい、社会からの信頼に応えられるものに。
・オランダでの地域高齢者サービスは、1チーム12人で構成した看護師が、一人の高齢者に一人が担当し、アセスメントからケアプランと介護も全て行うこと で担当の高齢者の全てが理解できて効果的なサービスができる。その上、家族や地域の人たちの協力も取り付けてサービスを担ってもらうことで費用も安くな り、本人も満足できるというやり方をしている。
・日本の福祉の現場も世界に誇れる可能性を持っていると思っている。
・福祉の現場では学歴とかは重視せず、雇ったら現場で学び、資格をとってもらいそれぞれのスキルによって仕事を担ってもらう。色々な職種を経験した人たちがどんどん参入してもらえる場ではないか。
・厚労省では「我がこと・丸ごと」地域共生型福祉として生かそうと考えている。
・高齢者世帯が4割となり約800の自治体が消滅の危機にある。限られた財源と人材で縦割りでなく丸ごと支援に関わっていくシステムを考えている。
・成年後見制度についても現在利用促進法でいろいろと検討されているが、なかなか本人にとって利用価値のあるものになっていない。かえって本人の意思や生活を制限するものになりかねないものになりはしないかという危惧がある。しっかり見ていく必要がある。
・イギリスでは、チームで地域が協力して後見していく様にしている。
・身上後見について、事業所の法人後見ということが言われている。事業者が後見するのは利害相反の関係で財産の管理はよくないと思うが、利用者の状況を的 確に把握しているのは事業者である。身上監護については、事業所に加わってもらった方が良いのではないかということで参画させる様に進んでいる。ただ、第 三者のチェックが入る様になる。制度設計と運用が難しいと思うが、今後の動向に注目したい。
・1700兆円の金融資産のうち6割を高齢者が持っている。高齢者の平均貯蓄が2,000万円。無年金の高齢者もかなりいる。厚生年金をもらっている人は 平均18万円。そのうち4割が使い切れずに貯金している。死亡時に遺産が3000万円。相続する人が60歳代。オレオレ詐欺の対象になるのである。
・成年後見を利用している人が20万人。専門的な成年後見が63%。報酬が2,3万円で計算すると年間約400億円。オレオレ詐欺の被害額がこれより多いのである。これがまだまだどんどん増えてくる。
・先日も地域共生型福祉で検討会議があった。福祉サロンの話があったが、このオレオレ詐欺対策をもっと話し合った方が良いのではと思ったりした。
・行動障害や重度障害の人たちがこの地域共生型福祉の中であまり議論されてなく、できるのかというのが気がかり。こういった点を育成会が指摘していく必要がある。
・触法障害者のケアも話題となっているが、環境とか支援する側の責任という視点で議論すべきでは。障害者のケアも受動的なものでなく、障害者が地域で人生を楽しむという様にすべきでは。
・行動障害の人はなかなかグループホームに入れてもらえないが、2年前に行ったことがある北海道の社会福祉法人では、グループホームに151人が入ってい てそのうち102人が強度行動障害支援区分の6の人だそうだ。一人一人の障害や行動特性を調査し綿密な対応計画を立てて対応している。
・かわいそうな人を助けてあげるという職員のアイデンティティーを変え、適切な対応していく専門的な仕事で、障害のある人の幸せを作り上げるクリエータルな人だというものに。
・ALSの岡部さんはまぶたと唇をちょっと動かして母音と子音を合図して隣の付き添っている人が読み取ってコミュニケーションを行なっている。全身に麻痺 が来ているが、海外の会議にも出席している。東京大学のゼミを担当していて、ゼミにも来てもらった。学生は最初は半信半疑で引き気味であったが、100分 のゼミでだんだんと変わって来て終わった後、学内のイタリアンレストランで懇親会に参加するほどになる。
・その折に一年生の学生が「僕は東京大学に入るのが人生の目標であった。その目標がかなって何をして良いか分からなくなった。岡部さんを見たときになんと 不幸な人としか思えなかった。生きる意味はなんだろうかと思った。いろいろと話を聞いたり映像を見せてもらううちに生き生きと人生を楽しんでいることがわ かって来た。どちらが幸せなのか分からなくなった。もし、あなたの病気が治って僕たちの様に健康になれたとする。ここにボタンがあって、ボタンを押したら 今の自分に戻るとするとあなたは押しますか」と尋ねた。
・岡部さんは「絶対に押します」と答えた。
・みんなが「どうしてか」と尋ねると、岡部さんは、「体が動かない不自由よりも、心が動かない不幸の方が私には耐えられないからです」と答えた。これに学生たちは誰も答えられなかった。
・昨年の7月26日の未明。相模原市の重度障害者施設に元職員が押し入って19人を殺し、26人に怪我させた。その時にその職員が真っ先に言ったことは声 をかけて反応がない人から殺して行った。重度の障害者は生きる価値はない。だから、僕が安楽死させて社会のためになることをしたのだ。とんでもないことを 考えて実行してしまったものである。
・岡部さんの話を聞かせて見たいと思った。生きる価値はなんだろうか。社会に不幸を作ることしかできないのだろうか。逆ではないかとも思う。
・岡部さんの話を聞くと他の講義が味気なくなって出たくなくなるのですと学生たちは言う。このゼミに出ていた四年生の男子学生は休学し、海外へ一年間行 き、戻って障害者施設や高齢者施設で働き、生きると言う意味とか命とはとなかなか答えができないことを考えている学生がいた。
・障害のある人たちは、東大の優秀な学生を変える力があると思った。
・今の世の中は、視聴率とか株価とか瞬間的なものに目を奪われてしまいがちだが、障害者とはそうでなくて、じっくり付き合うとじんわりといいものが深いと ころ湧き出してくるものを持っている。ナイーブな若い学生たちにとって目標が分からなくて感受性の高い時期に障害者と触れ合って人生の生き方について影響 を受けることは良いことではないかと思っている。
・成年後見利用促進法ができて、その委員として参画しているが、どうも障害者のことよりも弁護士と司法書士の論戦に偏っているような気がしてならない。
・本人にとって成年後見はあまり自分の生活にメリットがなく、返って自分の生活を制限するものだと感じている。
・地域での生活の上で、いろいろの専門家の人がチームとして、困った時に支援してもらえるようにするのが、成年後見制度の正しいやり方ではないかと思っている。
・アメリカの障害者差別禁止法の策定に関わった担当官にインタビューした時に言われたことは「制度や法律を一つ作ったからと言って簡単に世の中は変わらな い。しかし、今、目の前の現実は変えられないけれども未来を変えることはできる。そのためには教育が大事である。子供達や学生たちに障害者に触れ合っても らえ、障害者を知ってもらえ、社会の多様さの大事さを知ってもらうのだ。今、すぐには変わらないけれどもそう言うものを身につけた彼らが成長し、社会を担 う様になった時、社会は大きく変わってくる」と。
・はじめに見てもらった人口推移で2055年以降には私はもういないが、私の息子は生きている。その社会を支えていく人たちを今から作っていくことが大事なことである。
シンポジウム 「これからの育成会運動で大切な視点」
配布資料「これからどうなる?知的・発達障がいのある人の暮らし」
シンポジスト 又 村 あおい 「手をつなぐ」編集委員
野 沢 和 弘 毎日新聞 論説委員
大 塚 晃 上智大学教授
久 保 厚 子 全国手をつなぐ育成会連合会会長
田 中 正 博 全国手をつなぐ育成会連合会統括
田中
・今日は、次の七つのテーマで話しあっていきたい。
1 地域生活支援拠点の整備に向けて
2 相好支援法3年後の見直し
3 高齢障がい者と介護保険の関係
4 成年後見制度の利用促進
5 親亡き後のお金のこと
6 虐待防止法・差別解消法
7 これからの育成会活動に向けて
・午前中の会長会、事務局長会でお話しした来年の事業計画でもこの7点が大きな課題となるので、各都道府県、各市町村の育成会も周知いただきたいし、活性化事業についても予算が圧縮されたが活用していただきたいし、この中でも協議いただければと思う。
・話の進め方であるが、この7点について又村さんから説明していただき、これに対して、久保さんからお母ちゃん目線で質問してもらい、大塚さん野沢さん、また又村さんから答えてもらう。気になっている点や問題点も私も含めて出していきたいと思っている。
・それでは、地域生活支援拠点の整備に向けてのお話を又村さんにお願いする。
又村
・今日のあげられてる7点から「地域生活支援拠点の整備」を話したい。
・まず、この今の動きの確認を。国が作成している障害福祉計画(数値目標立てて管理しているもの)の中で平成30年3月までに整備しようと位置づけされている。
・今、多くの市町村が30年には間に合うかどうかと言うことで整備しているところである。
・実は、今、野沢さんも委員になっている厚労省の社会福祉審議会の障害者部会で次の障害福祉計画の基本方針がほぼ固まってきている。
・その中で、拠点の整備が全国的に進んでいない。これをもう一期繰り延べしようと言うことになっている。したがって32年度末、すなわち33年3月までに整備することとなる。
・だからと言って安心してもらってはダメで、3年伸びたからと言って整備が終わり時期のことであるので、今まで通り30年末には少なくても支援拠点の基本 方針や機能をそれぞれの地域で共有してできれば整備をしてもらう、できなければ3年かけて整備をしてもらうという進め方がいるのではないかと思っている。
・基本的に責任主体は市区町村となっている。それぞれにおいてどう言う機能が必要か、重度の人も含めて地域で暮らすためには安心はどこにあるのかと言うことをきちんと整備をしてもらい、育成会からきちんと意見が出ていることが重要である。
・もちろん日常的に懇談会などで意見が出せる場がある場合もあると思う。できるだけ、この拠点の話については、育成会の中で話を整理して、これとこれとこれは絶対に外せないと言うことを明示することが重要である。
・だからと言って、抽出された支援やサービスがすぐに整備できるものではない。30年末までには方向性を出して、32年度末には整備すると言うことになる。
・支援拠点には四つのタイプがある。
・入所施設に機能併設タイプ
・小規模入所施設を整備するか、既存の入所施設を拠点とするタイプ。
・入所施設には24時間365日職員がいるので安心生活支援事業、短期入所、重度対応、看護・ヘルパーステーションも併設
・施設整備補助の可能性はあるが、入所施設からの地域移行は計画通りであるので、新設には県内全体で調整する必要がある。
・大きめのグループホームに機能併設タイプ
・グループホームも24時間365日対応ができる。重度の人も受け入れているので、「安心生活支援事業」も併設
・単独型タイプとして通所施設が拠点となるもの。
・新潟の「りとるらいふ」などが典型例。生活介護事業所に短期入所わ併設し、安心コールセンター、看護・ヘルパーステーションも。
・既存事業所による機能分担タイプで面的整備タイプと呼ばれているもの
・建物としての「拠点」はここだと言うことで決めずに、既存の事業所の機能を活用して対応するもの。
・短期入所の定員を増やすとか、相談支援を24時間対応にすることで対応。
・この面的整備タイプを進めようとしている市町村が多い。
・やり方に私は拘っているのでなく、重要なのは機能である。知的障害や発達障害の方が地域で暮らすためには絶対不可欠な機能がクリアされることが重要である。
・面的整備は、市町村が計画を立てて、実際に整備をしてもらわなくては実現しない。市町村で面的整備に取り組むところは多いと思うが、一番難しいと思われる。
・30年3月までが33年3月までに変更される見込みであるので、育成会としても意見の集約をして提言することが重要である。
田中
・地域生活支援拠点については、小規模入所施設と言うことで皆さん方が反応して育成会の中が二つに割れてしまうのかと言うほどセンセーショナルな出だしで あったが、現状は足りないショートステイを一つの象徴にどのように具体化していくのかと言うものであったが、久保さんの目線からどんな課題を感じている か、お答えいただきたい。
久保
・お母ちゃん目線で言うと、まず、四つのタイプがある。一つ目の入所施設であるが、入所施設は大体辺鄙なところにあるので、相談やサービスに不便ではない かと思う。二つ目のグループホームは良いなあとは思うが、土日の担当がなかったりする中で24時間対応ができるのか、他の拠点としての機能を持つことはか なり厳しい。通所の施設がする場合、通所の職員が夜を含めて対応できるだけのノウハウを持っていないのに見る覚悟はあるのかと親は思う。
・私の地元の滋賀は面的整備である。この言葉が出る前から面的整備をしていた。緊急時はこの事業所、長く面倒を見てもらうにはこちらの事業所と言うように 分担していた。それぞれの得意の分野を生かしていくと言う良い面はあるが、法人の垣根を超えてしなくてはならない、そこが結構やりにくい。
・それぞれに課題があるから、我々がその地域にあった動きをすれば良いのであろうけれども、それぞれ地域にあった動きをするにしても課題があるかなと思って、それらの課題に対して親の会としてどう動けば良いのか教えて欲しい。
又村
・この冊子の最後の資料「地域生活支援拠点整備のための地域診断」がまだ未定稿なものであるが、活用してもらうと役立つと思う。
・まず、育成会として何が必要かをきちんと伝えること、それを役所が何が足りなくてどう整備していかなければならないかを明らかにしていくと言う二つの方向がある。
田中
・まだ、発言いただいていない大塚さんに意思決定から相談を組み立てることでといろいろと力を入れてもらっているが、地域生活支援拠点とその流れのことでお話しいただければ。
大塚
・地域生活支援拠点については期待しているが、無理だと思う。それは地域を作ってきた実績のないところにはできない。相談支援が十分に行われ自立支援協議 会により地域を作ってきているところはすぐにできるであろうが、相談支援事業所が十分機能しているところがまだまだ少ない。
・先だって、NHKで長野県の中野市は入所をゼロにすると言うことでグループホームへ移行する様子を放映していた。あそこには10数名の24時間対応でいつでもどこでも駆けつけるこの仕組みがこれなんである。
・相談支援専門員の方が地域を作ってきたからできるので、全国でもここぐらいであり、他ではできない。国も無責任だ。これについて補助金は全く出ていない。
・地域生活支援事業から勝手に使って良いと言うだけである。これをできるようにするためには、グループホームを整備するお金とコーディネーターの補助金もきちんとついていない。
田中
・相談事業に期待していないと言いながら、いっぱい期待していて、相談支援事業の研修も作っているので、この流れで地域生活支援拠点という言葉に惑わされるのでなくて、基幹相談というのが、もう何年も放置されている。
・基幹相談で24時間対応すると言っても行政では不可能であるので、委託相談をどうするのかということで委託の人たちが困っている人を見つけた時にショー トステイが身近にないと困るということを形にするのが地域生活支援拠点である。これから入ろうとするとプロセスなしで先着順で終わるという危険性がある。
・みなさんの身近なところで一番困っているのは、どの地域に行ってもショートステイだと言われる。うちの地域ではショートステイに入ろうと思っても三年先の予約がないとできないのだと言われる。
・ショートステイだけでなく、自立の体験の場とかいろんなものが組み合わさっているので、まず、ニースがどこにあるのかを真面目に育成会で取りまとめるの を、市町村ベースでやっていただかないと、国はこんな制度をしている、県はそれを紹介したと、市町村はみなさんからの声が上がっていないので適当に面的整 備と言っているという図式である。
・又村さんから提示された地域診断から始まるみなさんに役に立つガイドラインで掘り下げていきたいと思う。
・次に、報酬改定の課題について久保さんから。
久保
・新規の事業などいろいろと挙げられているが、国は30年度の報酬改定で決まればすると言っている。
・お金をきちんとつけてもらうためにはどういう動き方をするかということもあるし、全体のパイを減らそうとしているので、もう増やすことはダメなのか、我 々はどこを守ったら良いのか、30年の報酬改定のところを基本にしながら教えていただいて、私たち育成会として声を挙げていきたいので、その辺りをお示し いただきたい。
野沢
・お金はどう考えても増えない。減らされる方向だ。どうしたら良いのかわからない。お金もないし、人もいない。
・厚労省が言っている「我がごと・丸ごと」は、お金もないし人もいないのでみんなで何とかしてと言っているようなもの。
・私は、高齢者とできるだけ一緒になって、高齢対策はいろんな分野が広いが、障害の分野は狭い。特殊詐欺の人は500億円稼いでいる。
・もっと新しい考えでやるしかないので、次のテーマである高齢障害者と介護保険ところで考えなくはならないのではないかと思っている。
久保
・障害者を高齢者の分野でするとなると、アレルギーを起こす人がいっぱい出てくるのではないかと思うが。心配。
野沢
・そういう人たちはそういう人たちでやってもらえば良いのではないか。
・障害サービスの一部を高齢サービスではできると思う。それを広げていく方法もある。地方においては特養ホームが空きはじめているところもある。
又村
・久保会長さんに安心してもらうために、今回、高齢障害者のサービスを円滑に進めていく対策について、野沢さんが言われたことと久保さんが心配されていることの内容が都合よくできている。
・どういう仕組みかというと、障害福祉の事業所が介護保険のサービスができるようになっていて、介護保険の側から運営経費の財源をもらえるのだけれども利 用者負担が生じるが、これまで通りに利用して後から負担分から返ってくる。つまり財源だけ、介護保険から利用できる。これは全部ではなく、所得の少ない人 に限られるものだが。
・それをもう少し広げていくと、3月1日に最新の資料が出たのだが、共生型サービスは、ヘルパーとデイサービスとショートステイの全部を網羅するというのが出た。今までは、デイーサービスとショートステイだけであったが、ホームヘルプも良いことになった。
・高齢を迎えた障害者にとって、障害福祉サービスはそのまま利用できて制度だけ介護保険に移っていく。ホームヘルプについては軽減措置がないが、他のサービスは低所得者であれば負担は現行並みか多少高くなるかもしれない。
・介護保険のサービスに障害福祉サービスが進出していくイメージ。だけれども、法第7条という介護保険の優先規定のがあり、いろいろ反対する人もあるがこれを無くしてはいけない。これがあるからこれを利用して介護保険から財源を融通してもらう。
久保
・30年の報酬改定が目の前に来ていて今検討している時に、介護保険から財源を取り込むというのは間に合うのか。
・障害福祉サービスの分野にいろんなところが参入して来て、例えば放課後デイなどの単価を下げて必要度の高いところに回すということも必要ではないか。
大塚
・報酬改定のことであるが、地域生活が中心だということになれば行動障害のためのグループホームなどにきちんとお金をかけるべきと思う。
・放課後デイや児童発達支援のガイドラインを作っているが、これも伸びがなく先行きがない状況。メリハリをつけることが必要。
・それと関係してサービスの質の観点から株式会社が決して悪いのではないが、放課後デイなどは3分の2が株式会社になってしまった。質をきちんと高めてほしい。
田中
・今、大塚さんが座長で児童のあり方検討会で、児童発達支援センターから放課後デイの話で、放課後デイでは児童指導員などの基準をゆるくしすぎた嫌いがあったので、育成会として十分注視してほしい。
野沢
・今の若いお母さんたちは昔と違い、昼から夜まで働かねばならない人もいるので、育成会で先のことまでいうなという運動をしていると、ますます若い親たちが利害が違うと思うので、そこは気をつけた方が良いと思う。
・子供の支援は大事で大変なことであるので、良い支援を作っていけばよかったので、悪いところはやめて良いところは伸ばしてくれという運動でなければ若い人の共感は広がらないと思う。
田中
・児童指導員の資格を低くして広げていったのは私なので広がったの私の責任だと厚労省のメモに書いてある。なぜ、その時に広がりが必要だと思ったのは、養 護者による虐待がサービスがなくて追い込まれることによる。40日の長い夏休みが始まると途端に胃が痛くなるという話をたくさん聞いたことがある。
・そこに届くサービスとして必要だということで始めたけれどもチェックが甘くて広がったものの量的拡大に割に質が上がらない問題が起きた。
・これから質をあげることが必要だということで、育成会として次世代を育てるということから打ち出していく必要があると思っている。
大塚
・放課後デイサービスはそもそも法律用の規定が時代に合っていない。何のためにやっているのか全然わからない事業である。
・自立のための訓練というものが書いてあって、そうなると訓練ということになり、今は勉強を教えるということで塾系統が入り滅茶苦茶になっている。
・野沢さんの言うように、働く親を保証するという法律体系にする方が良いと思う。今の段階できちんと言うべきではないか。子供を預けて30日間お母さんがお茶を飲んでいるのも児童虐待にならないか。そう言う意味で働くためのものと訓練とは分けて制度を定めるべきである。
田中
・報酬改定を含む三年後の見直しにはまだたくさん課題がある。病院入院の付き添いが可能になるが区分は? 自立の向けての巡回訪問は家からの自立につかないのか?
・報酬になると頭が大きくてつっかえて入らなくなるので、身を屈めながらいく必要もあるであろう。
・先ほどから出ている「共生型」のところを又村さんから資料により具体的なサービスについて説明をお願いしたい。
又村
・その前に、高齢障害者の問題で知的障害者が65歳になると何が問題になるかと言うことだが、介護保険では介護保険に規定のないサービスは使えないわけである。
・だから、障害のある人は65歳になっても介護保険に存在しないサービスは使えるのである。それが四つある。
・外出の付き添うヘルパー ・就労系のサービス ・グループホーム(認知症でない人) ・入所
・介護保険と関係あるものとしては、ヘルプサービスとデイサービス(生活介護)とショートステイである。
・65歳になると出ていけと言うことは、共生型になるとなくなる。制度上はクリアになる。同じ場所で利用できる。お金の話はちょっと不明。これが「共生 型」という仕組みで介護保険の優先原則は今まで通りあるが、通所サービスとヘルパーサービスは障害福祉サービス事業所もこの介護サービスを行う仕組みを導 入することになってこれを共生型と言う。逆もある。介護保険の事業所が障害福祉のサービスができるようにもなる。相互乗り入れができるようになると言うこ と。
・利用者負担については、特例が設けられるので、低所得者の方、長い期間障害福祉サービスを利用している方は負担を軽減するとのこと。これが国の説明。
・共生型とは何であるかと言うと障害福祉サービスと介護保険サービスの併設がしやすくなるもので、おそらく定員の内数で介護保険のサービスが内包できると言うもの
・定員40名の生活介護の例にとると、定員40名のうち5人が介護保険のデイーサービスを受けることができる。65歳の人は介護保険の保険証でデイサービスとして通所してもらうことになる。
・短期入所については、どちらを使っても良いことになると思う。ただ心配なのは、本当に事業所がしてくれるのかと言うこと。
・二つ目は、知的発達障害との重複障害がないとダメだと思う。行動障害で4とか5が出ている人は介護保険で介護1が出れば御の字である。下手にすると要支援になる。
・介護対象にならないとデイサービスに5日通うことができない。要介護1だとせいぜい2日である。今まで5日であったものが2日になってしまうので、足ら ない3日を障害福祉で上乗せしてほしいと今から話をしていないといけない。多くの障害福祉課の方ではちゃんと話を聞いてくれるけれど、介護保険に移った段 階でうちのお客さんではないと真顔に言う自治体もあるので、今から言っておかないと30年4月から始まるので心配である。
・お金のことも心配なのであるが、低所得の人や長い利用期間の人がいつまで使えるのか、このあたりはまだよくわからない。
田中
・介護保険制度の見直しも国会に出されて、介護保険から見た障害福祉を受け止めるという段取りも進んでいくのでどう言う風に進んでいくのが重要だが、基本 的に整理しなければならないのは65歳以上になっても介護保険をみんなが使うわけではないのを障害福祉を適用することが大事なので、介護保険が必要になる 65歳以上の人は介護保険を優先する。
・65歳になったら介護保険に置き換えると言う仕組みではないと言うことなのでわかりにくいからもっとわかりやすく介護保険でやってしまえと行政の担当者 が単純置き換えしてしまうとひどいことになると言う話なので、繰り返してみなさんが説明できるようになるよう、私たちからもいろんな資料を作っていきたい と思う。
・先ほど野沢さんからも共生型福祉の話があり、丸ごと地域の人材や資源を使って支えるという仕組みも、行政は縦割りであり、横を繋げていくことが苦手。国が勝手に制度を変えたと自治体の職員は思うことが多いので、ここはかなり重要なことになる。
・相談に関して、主任相談ということで進めているが、野沢さんとか大塚さんでその辺りのことで聞いていることがあれば。
大塚
・相談は信頼できないといいながら、本当は相談は大事なことである思う。相談の上手くできる人が育ってほしいと思いながら、なかなかできていない。
・これまで上手くいかなったのに、主任相談を作っても上手くいかない。
・それから国はこのようなことをもう一つ言っている。
・今までがケアマネージメントであったが、ソーシャルワークをと言っている。これも全くおかしい。そう言いながら私も言っていた。
・計画を作るというのは手段であって、どのようなサービスどのようにすれば良いかを立てていくものであり、計画だけでなくソーシャルワークが必要であると言っていた。
・でも思えば、ケアマネージメントも全うできなかったのに、ソーシャルワークなど絶対にできない。
・私たちは相談支援というものをどのようにするか、根本的に作ってほしいと訴える必要がある。
・ガイドラインを作ったりしたが、私自身わかりません。
・高齢者の共生ということが出てきていたが、介護保険の中で障害福祉サービスを相乗りさせていくことと、野沢さんが言われた共生というのはちょっと違うものである。
・共生というのは、児童、高齢者、障害者という制度の枠組みを全部取っ払って地域でいろんな人が上手く生きていこうとするのを共生という。
・介護保険を上手く使うようにしましょうという共生とは異なっているので、その混乱があると困る。本筋ではないと思うし、区別して考える必要がある。
田中
・ちょっとあちこちしたのであるが、次に、成年後見と意思決定支援ということで、先だって利用促進法が制定され、検討委員会のメンバーに久保さんと野沢さんが加わっているが、久保さんの方から気になっている点を話していただきたい。
久保
・先ほど野沢さんの方がいろいろと整理して話していただいたが、この委員会に弁護士さんや司法書士さんが意思決定支援を大事しながらと必ず言われ、自分たちの主張を言われる。それを聞いていてすごく上滑りの感じがして信用ならないと思い聞いていた。
・例えば、権利擁護支援センターでも成年後見を受けてしてもらっているが、そこにリーガルサポートとか弁護士の方が監督に入ると、その監督をされる方がこ のようにした方が儲かりますよというような助言をする人がいる。そこで権利擁護センターの人が怒っているということを聞いている。
・利益やお金のことばかりを考え、お金の管理や儲けるだけでなく、監督人であればなおのこと身上看護が正しくできているかをきちんと見てほしいと思う。
・野沢さんが言われたように、法人後見が本人ことを親よりもよく知っているのは利用してきた所の法人が見てくれるのが一番安心であり、そういう意味では法人後見が良いのではと思う。利益相反にならないように監督人をつけようという、その監督人が問題である。
・人の問題かもしれないが、制度自身を根本的に改めなければと思っている。その点、野沢さんはどう思っているのかということと、成年後見は本人の意思をど れくらい汲み取りながら本人の最大の利益のために後見しているのかが肝である。そこをやってほしい。そのためにお金を守るだけでなく、本人のお金を本人ら しい生き方ができるように上手に使うということを考えてほしいと思っている。
・このことを委員会で申し上げてきたが、なかなか話がわかってもらえないということがあってじれったい感じがしている。そりあたりも野沢さんの意見をお願いしたい。
野沢
・委員会に出ていて腹の底から怖さを感じた。僕らは虐待防止の研修とか、行動障害研修などで、本当に生きにくい人たちの気持ちとか、彼らの言葉にならない、ちょっとしたしぐさとか、掴み取って良い支援をしていこうかということをずっとしてきた。
・そういう所の感覚から言うと、成年後見を回している主だった人には全くそのような感じがない。そう言うところは他の所に回せば良いのでないか、それより も手続きが問題なのだと言う。その先はどうなるかと言うことは全然考えてなく、自分たちの領域の問題ではないのだと考えている気がしてくる。
・それが先ほどの共生型福祉でも高齢者の方が数が多いだけに高齢者に主導権を取られたら大変なことになる。
・発達障害などについて、ほとんど理解がないし、わかろうとしていないのではないかと思える。ものすごく乱暴なやり方ではないかとも思える。
・基本的なところは虐待防止はどうするか、行動障害の人たちの意思決定支援をどうするか、なかなか答えにならないところでジタバタしているこのあたりが中 心になって制度なり、人材育成なりをやっていかないと、単に空中戦で成年後見のことを議論しておけば良いのだとか、人材が足りないので高齢者と障害者で やっていけば良いのだと障害者は生きていくことができないのではないかと言う危機感を感じている。
田中
・成年後見と相談支援と言うことで話を進めたいが、成年後見の委員会で久保会長がこれまでの成年後見は財産管理だけで、身上監護が不十分であると3度も訴 えたが、専門家会議でできていると言い切っていたので、これをどうするかと言うことと、中心になって計画を立てて進めていくと言うことで相談が位置づくと して、今、量的に拡大している中で質が上がっていないことから、意思決定のあり方についてガイドラインを作成したと理解しているのだが、大塚さんどうか。
大塚
・知的障害者の方の意思決定を支援していくことは権利擁護の大きな形だがと思い、これからの大きなテーマではないかと思っている。
・ただ、意思決定と言うといろんな意味がいっぱい来てしまうので、みんなそれぞれ言うことがあるから、どの意思決定かなと思う。
・親も意思決定をする、事業所も支援者も意思決定をする。成年後見人もするし、学校もする。みんな意思決定をしているがそれぞれのレベルその場所場所ですることが異なるので、それを皆一緒にすると混乱することになる。ガイドラインを作ったの事業所でのものである。
・知的障害者の意思決定は何かと全面化をしたわけではないので、むしろ限定的に捉えてその場における意思決定、哲学的なことも含めてあるのかもしれない。整理して考えた方が良いのではないかと考えている。
・成年後見制度と意思決定支援も含めて、今の私の考えるところでは野沢さんの言っていたことの中では- – -。
・今回のガイドラインでも書いたのだが、事業所レベルではあるが、共同決定の仕組みなのである。誰か一人の人がこの人のことは俺がよく知っているからこう しようとか、親が一番よく知っているのだから親がするのだという仕組みを変えて、出来だけ本人の生活に関わる方や施設から地域に移行しようとすることに関 わり方など多くの人が、本人の最善の利益の観点から方向性を決めていこうとする仕組みを考えた。
・共同決定の仕組みの中で本人の一番良いことをしていこうとするもの。チームで支援していこうとするもの。
・このチームで支える仕組みを地域で生かしていく。そこに成年後見もその一部として関わってくると思っている。
田中
・そんな流れで又村さん何かあるだろうか。
又村
・四月号の手をつなぐで、この成年後見利用促進法の利用計画と言うものができるようになっており、それを掲載している。その案が今パプリックコメントで回っている。久保会長の出ている会議の内容なども含めて掲載する予定。
田中
・次にフレームとしてお金のこと、親亡き後のお金のことを又村さんに軽く触れていただきたい。
又村
・本当にここ最近、お金の関する研修会で、お招きいただくことが増えて、五年前までには考えられない勢いである。
・それは一つには生活のためにお金が必要なと言う当たり前の話ではある。もう一つはグループホームなどの新しい建物をどうしても法人が自前で作ると家賃を 回収しなければならない。どうしても利用する人に家賃を負担してもらわねばならない。その地域で暮らすためのお金と言うものをいろいろな人の協力をもらっ て算出すると、あくまでも一例だが、家賃補助が充実しているところとそうでないものもある。標準的なもので比較してみると月額マイナス3万円ぐらい。
・これを、1級2級で状況は変わるが、親御さんが70歳ぐらいに親としての役割を終わりとする。それを超えている人がたくさんいることは重々知っていることではある。
・お子さんが、30歳の時のお子さんだとすると、お子さんが40歳の時で親としては卒業と。その時までにお金を工面しておくにはどのくらい必要かと言う1500万円。
・どのようにこのお金を用意するか、用意できたとしてそれをどのように残すか、隠すかと言う課題がある。
・そのための制度として扶養共済制度、特定信託制度や保険などご存知だと思う。
・年金を取り巻く格差の問題が出たが、審査のガイドラインが示された。資料に加えている。
・総合評価方式になり、それにより3等級に分けられる。障害基礎年金は2級しかないが、障害厚生年金は3級となっている。
・障害年金で3級になったら支給されないので意味がない。
田中
・この年金の問題については、育成会の方にも意見を求められていると、会員からも格差があることについて指摘があった。良い結果になっているのかどうかがまだよく分からない。久保さんどうか。
久保
・本人にきちんと年金がもらえるのかと言うことがベースになることなので、心配だと思っている。ガイドラインが出たが、育成会としては不安に思っている。
・今までもらっている人は引き続きもらえるようにすると言うのが、年金局の話である。
・知的障害は精神障害の中に入れられているから、五年毎の見直しがある。その時に減額されたりすることは今までにもあったし、これからもあることが予想される。
・又村さんの話にあった3級になると言うと、結構軽度の方はこの3級になるのではないか、このガイドラインは私としては飲めないなと思っている。
・育成会としてもっと意見を述べていく必要があると思っている。何にしてもこの検討会をしているのがお医者さんばかりである。私たちが実態はこうであると訴えても医学的にみたらどうだと言う話になり、話が通じない。
・年金と成年後見では、医師の診断が必要でありその部分は医学モデルから脱していないのである。私たちは、社会モデルで行っているのにその二つは医学モデルなので、そこを直してもらわないといけないと私たちの思うようにならないと心配している。
田中
・野沢さんどうか。
野沢
・障害年金がもらえるもらえないかと言うよりも、年金制度そのものが支える人が少なくなり危ぶまれている。120兆円の積立金を運用して行っていると言うことだが、それにしても今もらっているお年寄りは恵まれている方で、すでに基礎年金の方が目減りしている。
・障害年金もこれに連動するので、親も子も厳しいことになる。国の方でも公的年金に頼らず個人でお金を作る算段をしてくださいと言われている。
・こちらもしたたかにお金がなくても暮らす方法を考えるしかない。田舎の方へ移住するとか、東南アジアへ移住するなど。
田中
・予想通りの展開になってきた。次のフレームに行きたい。虐待防止法と差別解消法であるが、育成会が権利擁護の視点で力を込めて制度化してきたものである。
又村さんに現状や課題の説明をしていただき、野沢さんと大塚さんに具体化してもらえばありがたい。
又村
・差別解消法については、今年度スタートしてよかったと思うが、差別取り扱いの禁止と合理的配慮になっており、詳しいことは内閣府のホームページを見てほしい。
・合理的配慮については、身体障害に比べて知的発達障害の部分が遅れていると言うか、省みられていない。
・なぜかと言うと、車椅子の人で段差があれば手伝わなければならないが、知的障害の人がパニックになっても衝撃があってパニックになっていると思わないで、パニックだったら抑えようとしてしまう。排除というよりは対処ということになる。
・これは、アセスメントが必要であるからである。知的発達障害の人に必ずアセスメントが必ず必要であるので、ここは育成会としてよく言っておかねばならないことである。
・合理的配慮とは、何にで困っているのかをちゃんと調べて困っていることを手伝うというもの。合理的配慮には100%アセスメントがある。
・たまたま身体障害の人はパッとみてアセスメントができる話であって、その違いだけである。
・だから、障害のある人の合理的配慮は必ず見つけて手伝うということである。
・あるいは、建設的な対話と呼ばれる考え方である。演奏会でクラリネットの音はダメだが、他は大丈夫ということになれば、クラリネットのソロの時は外に出て、なくなれば入るように案内するという建設的な対話が必要である。
・これらのことを地域に進めていただきたい。このために地域協議会がある。
・地域協議会は、都道府県や政令市中核市ではできてきたが、市町村では50%ぐらいでまだまだ十分ではない。
・これは、結構市町村にあるのが大事なので、きちんと作ってもらうよう働きかけてもらいたい。
・虐待防止法は大分前にでき4年半経ったものだが、なんども育成会で研修会を行なっている。状況を見るとご家族による虐待は数も多いし認定率も高止まりし ている。昨年度少し減っている。事業者の虐待では虐待認定件数はあまり変わりないが、相談件数はどーんと増えてきている。だんだん認知されてきているので はないか。
・びっくりするのは使用者とか会社の認定率が8割。めちゃくちゃな数字が上がっている。ほとんどが最低賃金を払っていない虐待である。
・養護者支援の部分を支援してもらいたいと思うが、モグラ叩きにならないようにモグラが出てこないようにすることが大事であり、そのためには、ご家族の立 場になるとイライラが許容量を越えると手が出てしまうので、イライラが許容量を超えないような工夫が必要であって、これが養護者支援である。
・これをほとんどの市町村がやっていない。
・例をいくつか挙げているが、親御さんが気軽に参加できるサロンを開設するとか、当事者団体が司会や進行役を担うので行政と一緒にしませんかと呼びかけるなどのコラボレーション(共同作業)が考えられないかと思っている。
田中
・大塚さんはこの流れの中でご意見はないか。
大塚
・合理的配慮という言葉は、社会的障壁の除去と意思表明ということがあって、意思表明ができない人をどうするのかということで何かサプシステムであればを考えなければならない。
・それから、補佐する人や家族や支援者、後見代理人なども、いつも言っていることであるが、支援者は本人たちの最大の権利養護者であるが、利益相反もあるだろう。あまり期待できない。
・それと建設的対話も関心があることで、言葉で解決することは大変理想的なことではあるが、なかなか難しい。
・だから、サプシステムがないところでは、知的障害、発達障害のかなりのサービス促進ということはちょっと考えているのであるが、悪いところもないわけではない。
・私たちはいかにも本人たちの意思表明を支持してきたどうか。それから建設的対話という良い言葉もあることだから、それができるように本人たちをパワーメントしていくのもすごい課題で、それらもできるような人もいるので、そういうことも思えばすごい良い法律だと思う。
・後は、最終的には一番重い人は困難なわけであるから、それを支える意思決定支援を考えなくてはということが大きな課題である。
田中
・野沢さん、市町村になかなか協議会ができないことで、何か。今日おいでになる方々に市町村レベルで力を出してもらうためにも何かないだろうか。
野沢
・市町村によって随分ちがう。明石市ではそのために市長になったとか、我が浦安市ではそのために条例を作って、虐待防止法と差別解消法のためにサービスセンターや権利擁護センターを作ったりした。
・10何回も話し合わないとなかなかうまく法律が使えないというまどろっかしいところがあるが、一方、企業などが気にして横並びできちんと守ろうという遵法精神があり、関心を持って独自にマニュアルを作ったり研修会をしたり始めている。
・これは、単に障害者のためだけのものではなくて、世の中のいろんなユニバーサルのイノベーションを進めていく上で結構影響を与えていると思っている。
・日本のスポーツ施設は障害者が行きにくい。野球場で東京ドームには車椅子の席が何席あるかというと5万人入るのに12席しかない。
・旧広島市民球場は一塁側と三塁側に3席ずつの6席しかない。まだ恵まれている。かっての甲子園球場には、三塁側にちょっとしかなかつたと。
・去年優勝した広島のマツダスタジアムの場合は、144席ある。設計する際にアメリカの大リーグの球場を視察して、多目的トイレも44箇所もある。
・知的障害や精神障害の人のためにホスピタルティスタッフを毎週10人用意している。それが分かると障害のある人がどんどん詰めかけるようになって、車椅子シートなどはいつもいっぱいで取れないようになったとか。
・強いニーズを持っている人を掘り起こすという面を合理的配慮は持っていると思う。企業はその辺りのセンスを持っている。
・そういうところで視野を広くするといろいろなことが目に見えてくる。目の前の狭いところを見ていると何を考えているのだと思ってしまう。
・じっくり考え、次の世代が変えてくれるという感じで今は思っている。
田中
・7つ目のテーマに行こうと思ったら時間になってしまった。とりあえず、午前中の会長事務局長会議で来年度の事業計画と予算について意見をいただいてい る。それらを踏まえ、もっと掘り下げて行かねばと思っている。それらを含めて久保会長からお話いただき、セッションの締めとしたい。
久保
・育成会はこれからどう向かっていくのかという方向性とたちまちの課題として今日色々と発言していただいてちょっとヒントになることもいただいた。
・これから育成会として、各県や市町村でこのような働きかけ方をしてほしいということもお示しして行こうと思う。
・今日、三人の方にいろいろと意見と色々な課題があることを教えていただいた。それを乗り越える注意点やヒントも教えていただいた。
・私たちの目の前でやらなくてはならないことが山ほどあって大変である。大変であるけれども育成会は元気に前向きで行きましょう。
・何せ、本人さんが元気であるから。本人を後ろから押すことができるよう頑張りたい。
・たくさんの課題を優しく噛み砕きながら、噛み砕いたものをみんなで考えて楽しくやるということが大事なことではないかと思うので、親も本人に負けずに進んで行きたいので、どうぞよろしくお願いします。