「障害者差別解消法を考える」研修会
平成28年3月4日(金)午後1時から岡山市立オリエント美術館地階講座室において約70名のみなさんの参加により開催した。この研修会は一般社団法人岡山県手をつなぐ育成会と岡山県知的障害者相談員協議会の共催で行われた。
1 開 会 開催要項
岡山県手をつなぐ育成会日下会長から、県下各地から大勢の参加を謝し、講師の又村先生を紹介して開会の挨拶とされた。
2 講 演
演 題 「障害者差別解消法を知り、地域で生かそう」 配布資料
講 師 又 村 あおい 氏
全国手をつなぐ育成会連合会
政策センター委員・機関誌「手をつなぐ」編集委員
内閣府 障害者差別解消地域協議会のあり方検討会委員(平成27年3月まで)
・今日話すのは「障害者差別解消法」についてで、来月に施行される。
・本日の開催要領にもあるように、この法律は障害者の差別をなくしていこうという意味では、とても良いものとして期待されているものである。
・実は一昨日全国手をつなぐ育成会のフォーラムがあり、野沢和弘さんが出ておられた。この野沢さんはこの障害者差別解消法の成立に向けて大変関わっておられた方で、この法律は、思い入れの強い法律であるとのこと。
・その野沢さんが言われてるのに、この法律はすごく可能性のある法律であるが、それぞれの地域で働きかけをしていかないと、ふたを開けてみると何も変わり ないねということになりかねない。そこで地域の皆さま、今日おいでの育成会の皆さんがこの法律はどういうもので、どういう働きがあるのかをご理解いただい て、各市町村の後押しをしてもらいたい。こういう視点でもってお話ししたい。
・まず、差別解消法の全体を話す前にもっと全体の話がある。この法律がなぜ出来たのか、その背景がある。
・それは、障害者権利条約である。これは重要なキーワードである。
・障害者権利条約は障害のある人の権利について定めたもので2006年に国連で採択された国際条約。
・この障害者の権利というのは、特別に優遇された権利というものではなく、健常者がごく当たり前に行使している人権、基本的人権である。
・これをこの条約できちんと保証しようというものである。
・障害があるために、窓口での受付をしてもらえないとか、投票に行けないというものを法律できちんとルールを決めようというもの。
・日本では、2007年9月に署名。署名したというのはこの条約を認めたということ。
・日本の批准は一昨年の2月に行われたが、実は小泉政権下で批准の動きがあったが、障害者団体から国内の法整備が整っていないのにとの抗議があり、取りやめた経緯がある。
・その後、政権交代があり、民主党となり障害者制度改革が行われ、虐待防止法、障害者基本法の改正、障害者総合支援法、優先調達法や雇用促進法などの整備 がなされ、そのトリとして平成25年に公選法の改正、そして障害者差別解消法が成立した。こうした整備の後に権利条約が批准されたのである。
・もちろん、国際条約の中にも差別について規定されており、第2条と第5条に示されている。差別とは「障害に基づくもの」とされている。
・これは、障害に基づき、区別されること、排除されること、制限すること、そして合理的配慮の否定の四つである。この四つが障害者差別に当たると言われている。
・これを日本の国内法でどう位置づけ、どう無くしていくかを障害者差別解消法で定めた。
・障害者差別解消法の考え方はどうか。その前には障害者基本法に戻って説明する。
・障害者基本法とは、障害のある人に関係する制度、法律、施策の基本的な考え方を示したもの。当然、この法律の中に障害者差別についても規定されている。
・それが障害者基本法の第4条である。この条文は三つの塊に分けられている。
・一つ目と二つ目の規定が障害者差別について示されたもので、三つ目は啓発に関するもの。
・一つ目には、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」と書かれている。
・これは、障害を理由として差別したり、差別的な取り扱いをすることをしてはならないと規定。
・もう一つが、今日のテーマになる合理的配慮というものである。
・この条文には「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。」と。
・まず、社会的障壁とはこれは平たく言うと障害の故のバリアと思っていただきたい。例えば、車椅子の人であれば段差というもの。その人の障害によって避け がたくバリアになるもの。しかも障害のあることがその人の責任ではない。ところが社会全体とすれば普通の文書で十分理解ができるが、目の見えない人には理 解できない。そこで点字とか音声読み上げなどが必要となる。
・本日の資料も文字だけのものだが、これはみなさんに示すのに手っ取り早いもの。社会全体の仕組みとして文字によることが前提とされている。また音声の会話も社会として効率が良い。
・社会全体が効率の良い方法をとったために、障害のある人がバリアを感じるようになった。であるから、これは社会的障壁ということになる。
・現に存しとは、現に障害の故にバリアを感じている人がいるということであり、その上に負担が重すぎない場合、それを怠ることによって権利利益を侵害することにならないようにバリアを取り除く配慮が必要であるということ。
・ 合理的配慮の考え方は、障害の故のバリアがあって、それを取り除いて欲しいという障害者が現に居て、さらにその障壁を取り除くのに負担が重すぎない場合は 実施して欲しいというもの。必要とするバリアを取り除くのであって、不必要なものは行う必要はない。しかし、取り除く上で手間がいらないのに、それをしな いと差別になる。
・合理的でないもの、例えばお肉屋さんに買い物に来た人が、八百屋さんで野菜も欲しいので買ってきてというものは本来のお肉屋さんの仕事でないものを要求することは合理的ではない。
・差別的な取り扱いをすることと、合理的配慮をしないことの二つを定めたのが、障害者基本法である。しかし、これだけであり、誰がするのか、いつするのか、どれほどするのかまでは示していない。
・この法律が具体的に運用できるようにするために定めたの障害者差別解消法である。
・そこで、障害者差別解消法の概要を見てもらいたい。
・まず、この法律を誰がするのかを定めている。国・地方公共団体であり、民間事業者が対象となってぃる。
・国・地方公共団体とは役所であり、民間事業者とはあらゆる事業を行っている全てで、個人は対象としていない。
・個人に対してはどうするかというのは、啓発の中で対応することになる。
・差別的な取り扱いしないようにと合理的配慮をどれぐらいするのかということが次に決められている。
・差別的取り扱いについては、役所であろうと民間事業者であろうと禁止。一方、合理的配慮に関しては、役所は義務、民間事業者については努力義務ということになっている。
・地域によって異なることがあってはならないので、具体的なルールブックを定めた。政府全体に示したのが基本方針と言われるものである。これは昨年2月に決定済み。
・ここでは、障害者差別とはどのようなことを指すのか、差別的取り扱いはどういう状況の時が当たるのか、合理的配慮とはどういうことを指すのか、合理的配慮の負担が重いときとはどういうときであるかの判断基準が書かれている。
・それを受けて、役所のそれぞれの行政機関で対応要領が定められている。行政機関には、様々なものがあり、障害福祉担当は障害のある人とはということをよ く理解しているが、行政の部門によっては全く障害者と接触したこともないところもある。少なくともどこの誰でも役所の人は最低限このようなことはしないよ うにとかこうしようという職員の行動マニュアルが必要である。それが対応要領である。
・これは国は作らなくてはならないが、自治体は作っても作らなくても良い努力義務となっている。これが悩ましい問題である。育成会が市町村へ知的障害者の 特徴はこうで、こういうように対応して欲しいと訴えるチャンスでもある。職員としても知らないがために大事になることもあるので、対応要領があれば避けるこ とができる。であるから、市町村に対して対応要領を作っているか確認して欲しい。もし、作っているならば、育成会から知的障害、発達障害への最低限の対応 の仕方について情報発信をしていただきたい。
・一方、事業者に対してであるが、事業者は多方面に亘っている。業界ごとに対応指針、ガイドラインを作るようにしており、ほぼ出来上がっている。
・なぜ、業界ごとにつくるかというと、業界それぞれによって配慮すべきことが違う。交通機関、医療機関、福祉サービス、スーパーマーケットとではそれぞれ配慮するところが異なる。
・それと業界を所管している省庁ごとに作っている。
・都道府県や市町村には、国のそれぞれでできたものが伝わっているかどうかが重要となっている。
・もう一つ大事なのは、実際に障害者差別の事案が起こった場合どうするのかということ。相談するところや揉め事を解決する仕組みが必要となる。
・野沢さんが指摘されていることであるが、この相談や解決の仕組みがこの法律で弱い部分である。
・相談を受けたり、解決に向けて努力しなさいとは書いてあるが、どこに相談や解決の機関を設けなさいとの規定がない。虐待防止法にはある。
・既存の窓口を使うということになっている。現実に相談できるところはまず障害福祉担当窓口であるので、基本的にはその窓口が受けることになる。
・全国回っていて、障害福祉担当以外で行っているところが数カ所あったが、それは人権担当部署。最近、置いているところが増えでいる。
・相談窓口というものは市町村にはたくさんある。それぞれの窓口の担当者が障害者差別的な取り扱いにならないような対応ができるようにしておくことはもちろんのこと。
・紛争になった場合は、基本的には裁判ということになる。ただ軽い事例の場合は、今ある既存の解決場所としては人権擁護委員さんである。人権擁護委員はそれぞれの地域の法務局の管轄となつているので、法務局との連携の中で解決を図ってくれる。
・役所の窓口の対応に問題がある場合は、年に何回か開催される行政相談というものがあり、行政相談員という人がおり、役所との間に入って解決に力を貸してくれる。
・こうしたもの以外では、障害者差別解消支援地域協議会というものがある。この組織が現実的にそれぞれの地域で障害者差別をなくしていったり、合理的配慮を広げていくためには、重要になると思う。
・この組織は関係者が集まって情報共有する場である。この関係機関というのがポイントで、障害者差別の事例が福祉サービスの場だけで起こるのではなく、バス、鉄道で、スーパーで起こることもあるであろう。であるから、これまでの自立支援協議会とはメンバーが変わってくる。
・揉め事が起きた業界のメンバーが入るなど、地元の関係者に加わってもらうことが必要。みんなでどういうことが障害者の差別になるのかという情報を共有す ること。あるいは、業者や行政で良い取り組みをしている事例についてそれを皆んなで広めるといったことがこの協議会の役割になってくる。
・障害者差別解消では、何をすれば良いかというルールブックを決めて、もう一つは紛争が起こった場合又は起ならないようにするための枠組みを決めているというというこの二つが差別解消法の大きなイメージとなるものである。
・これを踏まえて育成会に関係の深いところを説明したい。
・障害者差別解消法の目的のところに「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指そう」というこれは一番重要なところである。
・特に「相互に」というところがとりわけ重要で、何故かというと、障害者差別が起きた時、故意にした場合は論外であるが、ちょっと今忙して無理だとか、事 情があって無理とか、全く無知なため起こったものを一方的に処断してしまうのでなく、お互いの事情やできる範囲を話し合い、解決の糸口を見つけていこうと いうのが法律の趣旨である。基本的な考え方として、相互の理解によってできるところを探っていく、そして実現するというものである。
・次に、定義として、行政機関は国、独立行政法人、地方自治体など。事業者は、事業規模を問わず、営利、非営利も関係なく事業を行うもの全て。NPOも育成会も、またPTAや自治会も含まれる。
・このように民間事業者の範囲が広いので、合理的配慮については努力義務ということになっている。
・ただし、一般私人については対象外となっている。これは憲法との関連があってのこと。だが、啓発活動を通じての対応はできる。
・役所の責務としては、障害者差別の解消に関する施策の策定と実施が規定されている。
・各県市町村が作成する障害福祉計画の中に具体的な取り組みを今から織り込んでもらうよう育成会から要請しておく。
・育成会が一番障害者や障壁を取り除く方法に熟知しているので、情報を提供したり、また、本人からも訴えてもらうと理解してもらいやすい。
・次に不当な差別的な取り扱いについて説明。
・障害があるからといってサービスの提供をしなかったりする不当な扱いするものが差別になるが、ちょっと見ただけでは判断ができないような事案もあるので、相互に事情を話し合って判断することも必要である。
・事例として、私が心臓が悪く身体手帳をもらっている。医者からは急激な運動は控えるように言われている。それなのに心臓に悪いジェットコースターに乗りたいと訴えたことに対して係員が阻止したことは正当なことであり、差別的な取り扱いではない。
・もう一つの事例としてクラシックの好きな自閉症の人がコンサートにいきたいという。ところがある楽器のソロがあるとロッキングしたり、ステージの方へ駆 け寄ったりするという。主催者に入場をお願いするが、そのソロがあることにより制止できな行動があるのであれば、入場を許可されないと言われた。
・他の聴衆が静かに鑑賞しているのを阻害する恐れがあるためである。このように本人には差別的な取り扱いになるが、第三者の利益を阻害する場合については正当な理由があるということで、そのような扱いもやむえないことになる。
・その正当な理由については説明し、理解を得るように努力してほしいということは法律の中で書かれている。ここで終わると寂しい法律になってしまう。理由を見つけて断ることになってしまう。
・次が合理的配慮の考え方である。これについては先ほど話しましたが、バリアがあること、現に困っている人がいること、負担が重すぎないことの三つの要件がある。
・現にいるのか、いないのかは言ってもらわないと分からないということがある。例えば、車椅子の人が段差の前で立ち止まっている。気を利かしてあげてあげ るとなぜ要らないことをしたと抗議される。上がりたいと思っていないのにあげたということ。であるから、困っているときには困っていると伝えてもらうこと が原則となっている。法律の上では意志表明があったときに手伝おうということになっているる
・育成会などでは、ちょっと待てよということに。知的障害の子供が意志表明できるだろうかと疑問がわく。法律上では意志表明となっているが、基本方針の中 で、意志表明についての考え方が示されていて、もし知的障害などで本人の意志表明が困難な場合、家族や支援者が代弁することができるとなっている。
・基本的には、その場で言われて、その場でできることが多い。今日は車椅子の方が多いので、休憩時間は少し伸ばそうなどの取り扱いが合理的配慮。
・しかし、負担が重くてできないこともある。その場合の事例として、人手が足りないとか事務事業の機能を損なうような場合は断ることができる。やらねばな らない事務事業をそこねずにできる範囲というものが合理的配慮となる。この場合できない理由を説明することが必要である。
・合理的配慮はあらかじめ困ったと意志表明することで対応するが、そうでなくても段差を無くしてスロープにした方が良いとか、8階建ての建物であればエレベーターをつけることが明らかに必要であるなど事前にできることもあり、これらは環境整備と法律的には言われている。
・この環境義務については、お金がかかったり、人手がかかることもあり、努力義務となっている。
・内閣府のホームページで合理的配慮サーチというものを公開しているので参考にしてもらいたい。
・その他、教育では特総研(特別支援教育総合研究所)が教育現場における合理的配慮の事例を公開しているし、厚労省も合理的配慮指針事例集をホームページで紹介している。
・これまでの話は合理的配慮の一般論のものであった。
・知的障害発達障害で長い間配慮しなければならないところ、例えば教育や福祉の現場。
・今日お話しした事例は車椅子の人、目の見えない人の話を取り上げたが、これは障害についてイメージしやすいからだ。
・ところが、車椅子の段差が知的障害者にとって、人によって異なる。障害特性によってそれぞれ異なってしまう。また、本人からどこどこが不都合だと言葉で訴えることができない。見えにくいしわかりにくい。だから、私も事例が出しにくいのである。
・知的障害の場合には、まず、段差が何であるのかを探す段階があって、それを解消するために何をすれば良いのかという二つの部分がある。
・知的障害の人は何でもできるのに、これだけできないというのは、それだけ見てはわからない。その人の全体を見ることでわかる場合がある。そして、それを踏まえてどう支援していくかを考えていくという二段階がある。
・できないことがあれば、それをアセスメントし、解決方法がわかればそれを支援する。その上でバリアがなくなれば、次の問題になる作業面や行動面のアセスメントし解決方法を探るなどの繰り返しによって一歩一歩バリアを取り除くという関わり方が必要である。
・ある自閉症の人が学校でどうしても絵が描けない。いろいろと調べてみるとどうも色覚異常があることがわかり、色覚で過敏な反応をするので、学校で出され る白色の画用紙で色の濃い絵の具で描くように言われると苦痛で仕様がない。色覚の異常がわかり、その後、わら半紙でも良い、色画用紙でも良いし、中間色の 色鉛筆やクレヨンも良いことにすると、絵が書けるようになった。しかもいきなりアンパンマンの絵を描いた。
・この子供の場合は、色覚異常というバリアがあった。それがわかってそのバリアを除く対応ができることによってできないと思われたことができるようになった。こうした要因分析と対応が教育や福祉の場合には重要なことになる。
・では、先ほどのクラシックコンサートで帰らなくてはならないための対応について話したい。
・帰さないで受け入れるには、合理的配慮と環境整備ができれば良い。例えば、ロッキングがあると後ろの人に迷惑になる。では迷惑にならないずっと後ろの席 にしようという配慮ができるかもしれない。障害の特性を聞いて、スタッフとそれなりの対応ができれば入場させることもできるだろう。
・クラリネットのソロの場合には、立ち上がりステージに走っていくことは他のお客の迷惑になるので申し訳ないが入場を控えるか、その演奏の時間だけホールから出てもらうなどの対応をする。
・そうした少しでも聞いてもらえるように話し合っていくことが建設的対話と言われるものである。平たく言うと代案の提示。
・クラリネットのソロの対応として、ここの講座室では、後ろの調整室である。ソロの時にはあの調整室で聞いてもらえば、音も出ないし動きが他のお客に見えないので、迷惑にならない。
・この調整室でどうですか、モニターになるけれども控え室でどうですかという提案ができる。ソロの時間だけ外してもらえないかの提案もできる。
・建設的提案には、オールオアナッシングはないということである。これには、事業者側だけでなく、障害のある人と家族との話し合いでお互いの理解があって可能なことである。
・60%ほどかとか、一歩前進かということもあるであろう。障害者の側にとってそうそう満足のいくものにもならないかもしれないが、こちらからの代案によって改善が進むこともあるだろう。
・この場合のコンサートホール側と障害のある人の側だけの相対の対話だけでは難しいだろう。今後のこともあり、こうした話し合いを地域の人も含めて話し合う場所として、この地域協議会というものを是非それぞれに地域で考えていただきたい。
・そして、この場で単に地域関係機関が情報交換やネットワークを作るのでなく、建設的対話や合理的配慮の好事例などの共有をする。
・県での地域協議会の場合は、法務局とか全県的な交通機関などが集まるであろうが、市町村の場合は、自治会とか商店会、民生委員など地域での顔となっている人など加わると地域理解がグーンと進む。そういう意味からも市町村の場合は身近な人に入ってもらうことが良い。
・最後に啓発の問題に入るが、まずは情報共有が大事。まず大切なのは障害者差別解消法がここで始まるわけであり、ここに出席の方の中にも初めて聞いたとい う人がいるかもしれない。情報共有というのは、窓口でこういうのは障害者差別にならないかとか、障害のある人がどういうことで困っているのかヒアリングす るとか、育成会の方からこういうことで困っているとか、障害者の特性はこうだというのを発表することが極めて重要だ。
・できれば、良い取り組みをしてる人たちに発表してもらったり、建設的対話の良い事例についても協議会の関係者から示してもらうこともできるかもしれない。
・そして、もう一つが啓発。これで一番大切なことはグループホームの反対運動への対応だ。今までは、役所が地元の同意をとってくださいであったが、これは 今後は差別に当たる。その場合、ターゲットを絞った啓発を行う。反対している個人にできないが、反対者がいる町内会に絞って啓発する。自治会長さんに主導 してもらい啓発の場を設定してもらう。そこでどういう話をするか、協議会で話し合う。例えば、誰に話してもらったほうが良いか、障害のある人のグループ ホームがある地域では、障害のある人がいつも清掃し、挨拶をしてくれ、地域が明るく綺麗になった事例のビデオを見てもらうとか、実践を発表してもらうな ど、役割分担と内容を検討する。そういう戦略的な対応をしていくのも協議会の役割である。このような点を考えて、市町村の協議会の立ち上げに努力していた だきたい。
・各地域にある組織を活用してもらえば良いので、自立支援協議会、虐待防止の会とかあると思うので、第一部は自立支援協議会、第二部として差別解消の地域協議会で良い。まずはこれを作って持込める場を作る。これに育成会がしっかり後押ししていくよう頑張ってほしい。
以上で講演を終了し、質疑に移る。
質 疑
Q1地域協議会についてであるが、県はできているようだが、市町村はまだまだのところが多い。我々が呼びかけて作るべきか、行政の主導でするべきか。
A1法律上の規定で事務局については、それぞれの市町村、県の障害福祉担当部局に置くとされている。育成会の方では是非作って欲しいと要望して欲しい。育 成会としてはメンバーの構成とか動き出した時の応援をすることが行政側でも歓迎されると思う。提案をして我々も応援するから作ってくださいとお願いして はどうか。
Q2もし協議会ができたときの代表である会長は行政の人なのか、それとも我々障害者関係か。
A2協議会の会長さんは行政でも良いが、できるだけ障害当事者の方、もちろん育成会の人も含めてですが、良いと思う。私の勤めている平塚市では身体障害者 の当事者が会長になっている。協議会で意見を割振るときにきちんと障害者の人から意見を聞くようにすることが自然にできるようになる。当事者が無理であれ ば、事業者か、相談員か。
Q3障害当事者が参加する場合、知的障害者や身体障害だけでなくすべての障害者団体が加わるほうが良いのか。
A3そうである。
Q4事前に寄せられた質問で、事業者への啓発はどのようにしているのか。
A4これは、先ほどお話しした対応指針、ガイドラインが適用される。したがって、ガイドラインはそれぞれの事業所に送られ、十分職員への周知してください との指示があったと思う。これは県が実施している。施行後の施設の状況だが、突然4月1日からガラリと変わることはない。ただし、旧更生施設とか入所施設 では長く関わるところであるから、知的障害の人が何で困っているのか、アセスメントをしっかりしていただいた上で、支援を展開するということが、差別解消 法の下ではもっと求められるようになる。ご本人やご家族から20年間絵が描けてないのは、何か原因があると思われるので、ここを重点的に支援して欲しいと いう意志表明をする。これが結構重要なポイントになると思う。
Q5県や市町村で障害者の条例を作ろうとしている動きがあると思うが、全国でどれくらいあるか。この条例を作ることで先生のお考えがあるだろうか。
A5全国47の都道府県でこの4月から施行しようと30道府県が動いている。岡山県さんは特段お話しを伺っていないが、やや乗り遅れている。条例について 検討してはどうかと思う。それにはいくつか理由がある。一つは紛争解決が起こった時、人権擁護委員や行政相談などを頼ることが確かにできるが、もう少し踏 み込んで県で条例を作って県知事が乗り出すことができる。もう一つは、千葉県の場合、条例に基づいて障害者差別に関わる相談員を置いている。この二つを叶 えるためにも条例が必要である。県の育成会でも働きかけていただきたいと思う。
以上、15時前に講演を終了し、拍手でもって又村講師をお送りする。
3 報 告 配布資料
岡野副会長が、障害者差別解消法の4月から施行前に周知がどのように進んでいるか、対応要領の作成と協議会の設置状況などについて報告があった。
それによると、岡山県では地域協議会を設立する動きがあり、また、県職員の対応要領も定められている。県内の市町村においても4カ所で協議会の設立を、そして対応要領を井原、総社市で制定されており、3月までには14の市町村が制定する動きがあるとのこと。
4 閉 会
日下会長から、本日の研修会に県下各地から多數参加いただいたことを謝すとともに、障害者差別解消法が施行されるので、我々育成会が各市町村へ働きかけて一歩でも前進できるようお互い頑張りましょうと呼びかけ、閉会挨拶とされた。