第1分科会 テーマ「療育・教育・就労」
第1分科会 テーマ「療育・教育・就労」
会場 8階 第7会議室 参加人数 70人
運営責任者 | 岡山県手をつなぐ育成会広報・調査委員会 | 物部 徹也 |
司 会 | 岡山県知的障害者相談員協議会 | 青山鶏太朗 |
司 会 | 岡山県手をつなぐ育成会広報・調査委員会 | 岸 順子 |
提 案 者(助言者) | くらしき作陽大学 講師 | 松田 真正 |
提 案 者 | 岡山県手をつなぐ育成会広報・調査委員会 | 山崎 香織 |
提 案 者 | 東備支援学校 卒業生保護者 | 大森 照代 |
記 録 者 | 岡山県知的障害者相談員協議会 | 梅木 英子 |
物部運営責任者から、分科会日程、会場の諸注意などを説明し、青山、岸さんの司会で開会した。
提案1「障害のある幼児の小学校へのつなぎ」~グッドスタートのために~
くらしき作陽大学 講師 松田 真正 氏
提案要旨 レジュメ 配布資料
・現在、くらしき作陽大学に勤めていますが、以前平成16年から平成23年ごろまで、総社市の教育委員会で特別支援教育を担当していた。
・今は、特別支援教育と幼児保育を担当している。
・大学は、玉島にあるが以前は津山であった。
・所属はこども教育学部で、この学部はできてから9年目になる。
・前半は特別支援学級の話で、後半は特別支援学校の話をしたい。
・特別支援学級は知的・自閉と情緒学級の二種類となっている。知的障害支援学級の方が多い。
・最近は、知的障害はないが、発達障害があり自閉症スペクトルとか、AD,LDといったこどもが増えている。
・県下にそれぞれの学級が整ってきている。
・全国の障害児の在籍数が、昭和54年には、11万人であったが、平成26年には18万人となっている。
・二倍弱となっており、知的障害が増えているが、発達障害の方ははるかに増えている。
・これだけ発達障害が増えた理由としては、一つは岡山県内では診断のできる精神科のお医者さんが増えてきたということである。
・それと昔は、発達障害のあるこどもを社会が受け入れていたが、現在の社会ではコミュケーションが取りにくいことから顕在化したこともあるのではないか。
・ただ、メールとかラインが自閉症のこどもを救っているという事例もある。短い文章や言葉でやりとりできるから良いと言われている。
・今日は、保育園幼稚園から小学校へ上がる上での問題について話したい。
・三歳児から四歳児のお子さんで障害があるとお母さんがたがそわそわされてくる。2年後には学校だということで担任に相談してくる。
・そこで担任は見学を促している。
・特に保育園は学校とのつながりが弱かった。縦割り行政の関係でつながりが薄い。
・今は、市の行政も教育委員会と協力し合っている。そして、保育園や幼稚園の担任や園長から見学を進められ、紹介もしている。
・五歳児の7月頃までには見学を終えてもらうように進めている。小学校入学の半年前までに。
・どうしてかというと、手続きがある。後ほど手続きについては話すが、学校に行くと、まず出てくるのは特別支援学級の先生か特別支援教育コーディネーターの先生である。
・見学に行くと、集団で教育するところと個別に指導するところがある。これは小学校も中学校も同様である。
・個別だけでなく、小集団で受ける教育や普通学級との交流教育などもある。このようにきめ細かい教育が行われている。
・また、落ち着かない時は、少し薄暗くした落ち着ける場所を教室内や別の教室に設けてある。
・こうした教育の様子は、言葉だけの説明では分からないので現場を見てもらう必要がある。
・見学に行って、通常学級か、特別支援学級かとそれぞれについて家族と相談し、特別支援学級に行くことにすると、医師の診断が必要になる。
・これは家族にとって申し訳ないと思うのだが、この診断書が3000~8000円も取られることがある。これが今後の課題である。
・真星クリニック、旭川荘や精神科クリニックあたりはよくわかっていて、就学指導に必要なのねと言って作成してくれる。
・どのような障害で、個別指導が必要か、特別支援学級での指導が必要かなどのことを書いてもらえる。
・診断書は、在園の保育園か幼稚園に提出するとそれが、教育委員会に出され、就学のための書類が作成され、就学指導委員会という会議にかけられる。
・この委員会には専門の委員がおり、次の年度に就学する障害のある子供一人一人について支援学級か支援学校を協議し、答申するもので各市町村にある。
・近年、保護者の願いが優先されている。以前は医者の診断を重視する傾向にあった。
・私は、通常学級も見学するように言ってほしいとお願いしている。
・周囲の子供達の温度というものを親は感じておくべきだと思う。
・通常学級にも支援の必要な子供がたくさんいます。30人学級で5人ぐらいいる。その子供達がどのような支援を受けているのかが見える。
・凸凹同士が支えるというのは、無理だと思っている。体感させていくことが大切だと思っている。
・クラスでできる子どもが、できない子供を教えるような時間も設けられている。そのようなところも見てほしいと思っている。
・親と保育園とで話し合い、就学先を決めた後、本人にどう告げるかということが大切。
・幼児であるので、僕はこちらが得意だからできるところはこちらで勉強し、できないところはこちらで勉強しようねと話してあげると良い。
・何れにしてもポジティプに話すことが大切。子供に話すときに親と保育園、療育機関と同じように話すことも大切である。
・入学前に、通学路の確認と学校へ子供と出向き、教室や下駄箱など環境に慣れておくことも必要。
・ただ、要注意なのは、担任をギリギリにならないと教えてくれない。熱心に相談に乗ってくれた先生が入学してみるといなかったということもある。
・そのことを前もってよく保護者に理解してもらうことも肝要。
・特別支援学級では、7,8人であるので、個別に近いきめ細かい指導をしてもらえる。また、小学校では教科学習が重視されるので、その子にあった読み書きなどの指導が強化される。
・デメリットは、支援学校のように高等部までつながっていないので、就労への指導が十分でないというところ。また、保護者が孤立してしまうということがあるかもしれない。
・特別支援学級の生徒が少なくて、保護者同士の交流が少ないというところもあったりする場合もある。それは地域に親の会があることで救いになっている。
・特別支援学校も五歳児の夏までにオープンスクールに来てもらうようにしている。これは先ほどの学級見学と同じ。就学先を遅くとも11月までには決めていく。
・そして、就学相談を受け、就学指導委員会での判断を受けて決まる。その他、通学バスに乗れるか、乗り方の練習や長い時間乗車する場合の相談、また学校の周辺などの見学も。
・特別支援学校のメリットとしては、ライフスキル、自立活動を通して基本的生活習慣やコミュニケーション能力を高める。教職員が専門的な教育を受けているので、頼り甲斐のある先生方が多い。
・特別支援学校では、就労につながるように考えているので、就労に対する相談が行き届いている。
・デメリットとしては、地域の同級生の子供たちとの交流が少ないことである。後、小中学校と比べて教科学習の時間が減少する。
・子供の成長の上で大切なのは自尊感情を育てるということである。
・自尊感情には二つあり、みなさんがよく言われるのは「ありのままを認める」ということ。学校というところは「社会的な自尊感情を育てるところである」と思っている。
・この二つで障害のある子供を育てていく必要がある。これをそれぞれの幼児教育、学校教育の場で育てていくことが大切であると思っている。
提案2「放課後等デイサービスを利用して」
岡山県手をつなぐ育成会広報・調査委員会 山崎 香織氏
提案要旨 レジュメ
・まず、簡単に自己紹介をしたい。三人の男の子の母である。長男が高校二年生、次男が小学五年生、放課後等デイサービスを利用している岡山南支援学校小学部四年の三男がいる。
・三男は療育手帳がAで、知的障害のある自閉症である。
1 「放課後等ディサービスとは」
・放課後等ディサービスは、2012年(平成24年)4月に定められた児童福祉法としての事業である。
・障害のある、主に6歳から18歳の就学児童(小学生・中学生・高校生)が学校の授業終了後や長期休暇中などに利用できる施設である。
・ただし、引き続きサービスを受けなければ、その福祉を損なう恐れがある場合は、満20歳に達するまで利用が可能である。
・障害のある子供達は、通常の学童保育に馴染むことが難しいなど、学校外の居場所や過ごし方に悩むケースが多くある。
・学校外で集団生活を行う機会や居場所を作り、障害のある子供がいる家庭を支えるために創設され、障害児の学童保育とも表現されている。
・保育所や放課後児童クラブとの違いは、利用できるのは障害のある子供達であるということや、小学校から高校まで幅広い年齢の子供が利用できることである。
・1ヶ月の利用日数は、福祉事務所などで子供の障害の状況や希望を聞いてもらった上で決定する。利用するに当たっては、療育手帳や身体障害者手帳が必須ではなく、手帳がない場合は医療機関などの意見書を提出する。
・月の利用料は、原則として1割が自己負担であるが、所得区分に応じて負担上限額が設定されている。
・それでは、ここからは我が家のケースを紹介しながらお話しするが、利用されているご家庭それぞれの状況は違うし、地域差もあると思うので、参考までお聞きください。ちなみに我が家は岡山市南区に住んでいる。
2 「放課後等ディサービスを利用するまでの経緯」
・我が家の三男は、2歳から旭川荘のみどり学園に通っていた。みどり学園を卒園する3ヶ月前より放課後等ディサービスを利用できる事業所に連絡をして、見学・面談をした。
・事業所に連絡をする前にしたことは、すでに利用している先輩お母さんからの情報を得たり、障害者のしおりを見たりして、我が家に近い事業所を探したことである。岡山市の「障害者のしおり」は、各福祉事務所なとでもらえるし、岡山市のホームページからも見ることができる。
・そして、ここに行ってみようと決めた事業所と、まずは日中一時支援の契約をしてから、みどり学園のお休みの土曜日に通い、午前中から始めて昼食後まで、15時まで、と行った感じで徐々に時間を長くしてなれるようにした。
・小学部に入学する頃には、福祉事務所へ放課後等ディサービスの利用申請に行った。後日、受給者証が家に届き、放課後等ディサービスの契約を事業所と結んだ。
・うちは、1事業所のみと契約をしているが、周りでは二カ所以上と契約している方が多いように思う。
・その理由を聞いてみると、一つ目の事業所で「その日は利用者がいっぱいだ」と言われた時にもう一つの事業所にお願いできることや、日曜日や祝日も利用できる事業所とも契約をしているとのことであった。
3 「放課後等ディサービスを利用して、本人の様子」
・現在小学四年生の三男は、一度も放課後等ディサービスに「行きたくない」と意思表示をしたことがない。むしろ楽しみにしているようである。
・毎朝学校に行く前に今日の簡単なスケジュールを確認をするが、「いちばん、がっこう。にばん、事業所。さんばん、おうち。」と言っている。ちなみに事業所を利用しない日は、にばんはスクルーバスである。
・二つ以上の事業所と契約している方から、よく聞く困ったことは、「今日はこの事業所に行きたいけど、こっちの事業所はイヤだ。」ということがあるようである。うちの場合は、これはないので逆に比べられなくて、うまく行っていると思う。
・我が家の月に放課後等ディーサビスで13日、日中一時支援(レスパイト)で8日の合計21日の利用が可能なので、ほぼいっぱいいっぱい使っている。
・そのおかげでうまく行っていると思うことは、小さいうちからたくさん通っているので、本人のスケジュールの中でも行くのが当たり前になっていることや、 夏休みなど長期の休暇でも生活のリズムが大きく崩れることがなく、新学期もスムーズに落ち着いて過ごせているということである。
・本人の様子としてではなく、余談であるが、三男と長い時間を一緒に過ごしてくれている職員さんは、三男の特性の理解はもちろん「いつもとちょっと違うか な?」という、様子なども細やかに気づいてくれるので、親の私としては、三男を一緒に育ててくれているような、心強い存在となっている。
・普段、放課後に利用している時の大まかな流れは、学校が終わると事業所が学校まで車で迎えにきている。その車に乗り事業所に着くとカバンを置き、職員さんが用意した課題をする。この時に学校の宿題をする子もいる。
・課題が終わると、おやつを食べて、自由に時間を過ごしている。ブロック遊びや本を見たり、職員さんと公園に行ったりして遊んでいる。年齢の違う他児とも 遊んでいて、我が家では、兄たちと遊ぶことがあまりないので、微笑ましく思う。その後、17時になると車に乗り、家の前まで送ってもらって帰ってくる。
・土曜日や長期休暇など、1日利用する日は、朝9時に家まで事業所が迎えにきてくれる。そして、イベントやボウリングに行くなど外出も多く、将来の余暇活動としても役に立つ経験をたくさんしている。そして、夕方5時になると、また家の前まで送ってもらい帰ってくる。
4 「放課後等ディサービス事業所と学校と保護者の連携について」
・放課後等ディサービスを利用し始めてからずっと、学校で行われる個別懇談の時に、事業所の職員さんも入っての三者懇談ができないだろうか?と思っていた。
・しかし、いつも学校は学校で、事業所は事業所で別々に懇談をしていた。
・私は、3ヶ月に一度ぐらいの頻度で子供が学校に行っている日の午前中に事業にお願いして個別懇談をしている。
・個別懇談というと言い方が少し硬いが、三男の最近の様子を中心にあれこれおしゃべりをするお茶会のような感じで、話を聞いてもらえだけでもストレス解消になるし、懇談のあとは、次の目標に向かって三男とまたがんばろう!といつも元気になれる会をしている。
・今年の7月に事業所とその懇談をしている中で、三者懇談の話をしてみたところ「学校の先生にお願いをしたら、三者でケース会議ができるよ!」「先生に行ってみようか?」と職員さんが言ってくださり、9月に念願の三者で三男のケース会議をすることができた。
・ケース会議では、今月学校でやっていること、事業所で頑張っていること、そのために家でできることは何か?などを話し合うことができ、学校と事業所と保護者それぞれの支援の仕方や指導のレベルを合わせることができた。
・このケース会議で印象に残っていることは、「私たちは三男くんのことを、ずっと支援したいと思っても、見ることができるのは18歳までなので、それまで に大人になってからも困らないスキルをどれだけ身につけられるかを日々考えている。」という言葉に三男の将来のために真剣に考えてくださる方が学校にも事 業所にもたくさんいるんだということに気がつき、とても嬉しかった。
5 「放課後等ディサービスの現状と課題」
・最後は我が家のケースというわけではなく、相対的にどのような感じかということを中心にお話ししたい。
・まず、放課後等ディサービスの現状としては、民間の事業者の参入も進んでおり、利用者の選択肢が増えている。
・ある事業所では、自立した日常生活を送るために必要な訓練として、着替えや掃除、料理など日常生活で必要なスキルを教えてくれたり、文字、計算、宿題などの学習に必要なスキルの獲得や集団でコミュニケーションスキル向上のためのトレーニングを行ってくれる事業所もある。
・また、就労を見据えた個々に合った作業や訓練をしてくれる事業所もある。
・そして、作業活動に力を入れている事業所では、粘土による造形や書道、絵を書く、季節に合わせた創作活動などをしてくれる。
・また、障害のある子供の社会経験や生活が豊かになるよう、地域交流を積極的に行っている事業所もあるし、土日や長期休暇中を利用して、動物園や工場見学などへの社会科見学をしている事業所もある。
・三男が利用している事業所でもカバヤやヤクルトの工場見学など、あちこちに連れて行ってくれる。
・このようにいろいろな選択肢があるが、どの事業所でももっとも重要なのは、障害のある子供たちが放課後にリラックスをして過ごせる居場所があるということである。
・この先の課題としては、事業所の量的な拡大が著しく、特に営利法人が数多く参入しているということ。
・岡山市発行の障害者のしおりで平成26年度と28年度の放課後等ディサービスを提供している事業所の数を比較してみると、平成26年度の指定通所支援事業所は27施設で、平成28年度では44施設と2年の間に17施設も増えている。
・なぜ、放課後等ディサービス事業所が増えているのかというと、従来は障害の種別に分かれ、未就学児と就学児がともに通う形でしたが、児童福祉法に移行さ れてからは、障害の種類に関わらず、子供の年齢に分け、共通のサービスを受けられるようになったために事業所側も年齢に応じた対応をすることで、専門性の 高い職業ではなくなったことが、一つの要因ではないかと考えられる。
・そして、事業所での過ごし方が単なる居場所となっている事例や、発達支援の指導技術が十分ではない事業所が軽度の障害児を集めているという事例がある。
・このことからも、質の高い事業所や保護者のニーズに応えることのできる事業所には利用者が多く、逆にそうでない事業所は儲けがないとやめていくというケースが、今後増えるのではないかと懸念されている。
・そのために、事業所には支援の質の向上と内容の適正化を図る観点から、制度面・運用面の見直しを検討していただく必要もあるのではないかと思う。
・最後になったが、このように放課後等ディサービスという福祉制度ができ、施設が充実してきている今、これもひとえに障害のある子供がいる先輩保護者の皆様方が強く国に働きかけてくださったおかげだと思っている。
・今、学童期の子供がいる私たちは本当に感謝している。そして、これからはますます利用しやすく、子供たちが皆笑顔で過ごせる放課後等ディサービスになるように、保護者の私たちも事業所との連携を大切に笑顔で過ごしていけたらと思う。ご静聴ありがとうございます。
提案3「障害を受け入れ、一般就労を目指すには」
東備支援学校 卒業生保護者 大森 照代氏
提案要旨 レジュメ
・私の方からは支援学校から就労まで、親子で頑張ったことをお話ししたい。経験談としてお聞きいただければと思う。
・まず、自己紹介をさせてもらいたい。軽度知的障害で精神年齢7歳から8歳程度の手帳を持っている18歳の娘の母親である。
・この3月に東備支援学校高等部を卒業し、岡山市北区にあるA型事業所「サンクルール」に入社しました。
・高等部に入学するまでの様子を話したい。
・支援学校に入学するまで、生まれてから、同年齢の子供と少し成長が遅く、個人差があるからのあまり気にしていなかったが、3歳になって幼稚園に行き始めても単語を発することもなく、療育に通ったり、幼稚園で集団生活を送る中で少しずつ言葉が出るようになった。
・2月生まれで成長が遅いのかなと思っていた。小学校では小さい時からみんなと一緒にできないので、同級生や先生に「できない子」と言われ、本人も「何でみんなと同じようにできないの?}と泣く毎日で悲観的で何をするにも自信が持てない生活を送っていた。
・私自身、出来ないことを障害と受け入れることが出来ず、少しでもみんなと同じようにできるようにと思い、家庭でも工夫をしてきた。
・登校前の身支度や帰宅後しなくてはならないことをわかりやすく番号付けにして表にしたり、プールのある授業が始まるようになれば、その前に温水プールに連れて行って慣れさせスムーズに授業が受けられるようにした。
・毎日、繰り返し継続することで、少しずつ覚えてできるようになったが、少しでもみんなに「すごいね」と認めてもらえるものを作ろうと思い本人が少しでも興味を持ってきたものは一緒に体験させてきた。
・中学校時代に支援学級に入るには療育手帳を持っていることが条件だったので、入学前に申請して取得しておきました。
・部活動は、入学前からクラリネットを吹きたいと言っていたので、吹奏楽部にも入り、頑張ってきた。
・小学校時代には、人との関わりが苦手で友達もなかったが、部活動では、友達も出来、演奏会活動をする中で少しずつ自信が持てるようになってきた。
・一人ですることが不安の強い子でしたので、可能な限り近くで見守ったり、時には一緒に参加して応援していた。
・次に、東備支援学校に進学してからサポートブック作成のお話をさせていただく。
・支援学校の入学は、本人も家族も全く希望していなくて、私立と県立と何回も受験して、そのたびに不合格の通知をもらい、その中で、合格をもらったのは東備支援学校だけであった。
・このような状況で高校生活がスタートした。入学当時を知っている先生方は、親子で一年間学校が続きかなと心配されていたそうである。
・家から学校まで自転車、山陽本線、赤穂線、徒歩と約2時間、初めての電車通学で、つきまといの被害にも会ったが、さん年間通い続けることができ、体力も付き、自力通学も頑張ることができた。
・学校では、自分で出来なくて不安に思っていたことを自分だけではなかった、と話し合える友達ができ、少しでも出来たことを「すごいね」と認めてくれる先生たちに囲まれてやってみようと思う意欲が出てきた。
・運動会での応援団長、生徒会長も立候補して本人がやりたいと思ったものは、少し背中を押してあげてやり遂げられるようにサポートしてきた。
・小学校1年から習っていた書道では、昨年書道教室主催の作品展に初めて出品し、入賞した。大人に混じっての授賞式、会場は豪華なホテルで食事付き、出 席するにはも会費を取られてお金の方は大きな痛手になったが、本人にとっては大きな自信になり、大人の中で過ごすことや、食事のマナーなども社会に出る時 に役立つだろうと思い、参加させてきた。本人は大喜びで、またこの場所に来たいと1年後に向けて練習に励んでいる。
・また、校長先生の勧めもあり、別の作品を「特別支援学校文化祭」に出したところ、全国「知的校長賞」という大きな賞をいただいた。
・作品は、東京で展示され、表彰式も東京で行われた。これにも参加させていただき、良い経験になった。
・これは、高等部での最高の思い出になった。
・高等部に進学してすぐ始まった進路相談では、本人も家族も私も含めて障害を認めていなかったので、当然一般企業を希望していたが、先生から、A型で経験を積んでからのほうが、と話があり、納得できずにいた。
・東備に入学してから、地元の人から「なんで東備に行ってるの ?」と聞かれることがあり、どう説明したら良いのかと困っていた時に、学校でサポートブックの研修会があり、これがあると娘のこともわかってもらえると思い、作成した。
・担任の先生や関わってくれている先生方、先輩、保護者の意見を聞きながら、本人と一緒に作成していく中で、改めて我が子のこれが障害なんだと認めることができ、娘も自分の苦手なところは周りの人に助けてもらった良いのだとわかり、親子とも気持ちが楽になった。
・本人の苦手な部分は支援を必要としているのだとわかり、就労A型事業所に決めた。
・高等部で職場見学や実習でいろいろな作業を体験することの中で、自分の得意不得意を見極め、職種を選んだ。
・実習で体験した箱折りやスーパーの品出しなどの仕事がしたいと思うようになり、実習中楽しく作業ができた、今の職場を選んだ。
・一緒に実習を受けた他の学校の生徒と仲良くなり、話し相手ができたこと、また、東備の卒業生がいたことが心強く思えたようである。
・次に「就労について」である。
・就職してまだ8ヶ月で、通勤はやはり約2時間かけて通っている。
・通勤で疲れて帰ってくる毎日ではあるが、仕事は楽しくしているようである。
・仕事で困ったことや将来の夢について、指導員に相談に乗ってもらっている。
・いろいろなことに挑戦したいという意欲は就職してからも衰えを見せず、入社して3ヶ月目の6月に行われた「アビリンピック」に自ら参加したいと申し出て、縫製部門で参加した。
・「アビリンピック」とは、障害者の就職した技能の習得を競う大会で、縫製、喫茶、データー入力など12の部門がある。
・事業所では、仕事が終わってから、一緒に縫製の練習をしたり、また、普通免許の取得のために教習所に通っているが、これも仕事が終わってから、指導員と一緒に勉強している。
・「サンクルール」では、本人のやりたいことを応援してくれてサポートしてもらっている。また、次の就労に向けて必要なルールやマナーを厳しく指導してくださる。
・通勤時間はかかるが、ここに決めてよかったと思っている。
・高等部を卒業してから、地域支援センターが相談の窓口になっていただき、本人の目標や将来設計について細かいところまで相談に乗ってもらい、安心している。
・これからの目標であるが、今後の本人の目標は普通免許をとること、2年後の一般就労を目指して体調を整えること、一人暮らしを始める、お給料の使い方を考えるなどがある。
・就労については、住んでいるところが田舎で交通が不便なところなので、一人暮らしができれば、就職先の選択が広がるのではと思っている。
・一般就労については、高等部で前提実習があったように、勤務先への配属、面接ではなく、一週間から三週間の実習期間があれば、本人も環境や人間関係を見極め、職場で続けられるかどうかの判断もできるのではないかと思っている。そういう制度が良いかなと考えている。
・そして、私の課題は障害者年金の申請である。今、少しずつ準備を進めている。
・その後は、親から離れて生活できるように必要なことを一緒にしながら、自分でできるようにすることを、目指している。
・最後になったが、支援学校高等部に進学するまでは、福祉についての何の情報もなく、相談機関もあることも知らなかった。
・学校の先生や学年の違うたくさんの保護者と話をすることで、自分にはない情報を得ることができた。もっと早く知っておけばサービスを利用できていたのに、と思うことがある。
・是非、在学中にたくさんの人とおしゃべりをして情報交換をしてもらいたい。お子さんにより障害がそれぞれ違うであろうが、私の話が参考になれば幸いである。ありがとうございました。
質疑
司会から、質疑を求めたが、なかなか出ないので、提案者から補足の説明をお願いした。
山崎さんから
・私の方から岡山市南区に住んでいて、放課後等ディサービスを利用していたのだが、もし県北の方で利用されている方で意見があればお願いしたい。
松田さんから
・放課後等ディサービスを分かりやすく説明いただいたが、放課後児童クラブ、学童と言われているものだが、昔から小学校のグランドの隅っこにかわいい建物 があって、放課後預かってもらっていたが、それの障害児バージョンが放課後等ディサービスである。その話をしてくださったもの。これも総社市に何箇所か あって、送迎付き。これがすごい。普通の場合は自分で帰る。遅い時間になれば迎えにいく場合もある。両親共働きも多い中、車での送迎があり助かっている。 このようなサービスを聞いたことがある人はどうか。県中部や県北ではどのようにしているか知っておられれば教えて欲しいということである。
津山ひかり学園計画相談担当
・津山の方でも放課後等ディーサービスも増えているし、未就学児の発達支援もて増えているが、先ほどのお話もあったが、できたと思ったらいつの間にか終わっていたり、逆に土日とか夜9時までやってくれるところも出来たり、本当にいろいろの実態がある。
・保護者に紹介したり、一緒に見学に行くことがあるが、今一見学だけでは特性が分かりにくいところもある。今まで前からあるところは流れが定着していて人がいっぱいで入れない。となると新しくできたところを紹介するしかない。
・見学に言ってもしているところも見れない。しかし、そこを利用するしかないかなということで紹介することがある。もちろん、初めて利用することになっ たら短い期間でモニタリングなど作らせていただいたりするのだが、そういったところでここで良いのかと悩んだりすることはある。
・あと一度繋いでしまうと、せっかく繋いだのに、もし違うところということになっても動きにくいということもあるので、悩むことがある。真庭など他の地域のことはよくわからないが、津山ではそういったニーズとか課題がある。
・学童と比べて送迎があるのが放課後等ディサービスと言われたが、その他に療育をしなければならないところに違いがある。そういった専門的なケアが一般企業から参入されているところでは物足りないところがあるので、そのあたりの見極めが課題であると思う。
松田さんから
・津山の方では場所が足りていないという状況なのであろうか?
津山ひかり学園
・28年度に入ってからはものすごい勢いで増えている。
松田さん
・そうですか、ただ続くかどうかは、これからですか。
津山ひかり学園
・半年で終わったところもある。
松田さん
・だから、手をあげたところが、町の中に育てていくというシステムがないと営業が成り立たなくなり閉鎖するという残念な結果になるのだねという現状であることがわかった。ありがとうございます。津山ひかり学園には、私どもの実習を受けていただいている。
山崎さん
・うちで利用している事業所の職員が言っていたのは、放課後等ディサービスでは、療育をしなければならないことになっており、日中一時支援はただの見守りだけであるので、みんなで外出させるとかは見守りだけで事故があってはいけないのでできないと言われる。
・保護者はお金のことばかり考えているが、療育の点も考えて利用することが大切と言われた。
松田さん
・今言われた日中一時支援でレスパイト的に利用する場合と、療育を含めて利用する場合とで違ってくるという話であった。それに柔軟に対応できる体制が整っている地域とそうでない地域とがあるのではないかということ。
・情報というのはどこから来ているのか?どこで事業所を知ったのか。
山崎さん
・みどり学園の先輩のお母さんからである。
松田さん
・このあたりの情報が市役所のポームページをみると、載っているのは載っているが、いくつもクリッククリックしてやっと見つけたという市町村と、バッとわかりやすく見える市町村と、いろいろある。
・僕の経験からいうと、中核都市以上、50、100万の都市になると複雑だ。なかなか見つけられないので、大変である。
・たまたま保護者がいて幸いだった。
・次に、就労のことなのだが、親がとても気になるところだと思う。学童期はすぐ済んでしまい、そこから人生は長いわけであるから、その就労のことで相談にのっていただいた先生のここはよかったとかいうことで言い残したことがあればお話しいただきたい。
大森さん
・今の就職先というが、かなり厳しいというので、評判になっているところである。高等部に入ると前期、後期と2回実習にいくのだが、その間にみんな泣いて帰ってくる日があるよと聞いていた。
・だけど、それだけそこの指導員の方が、A型事業所なので、将来的には一般就労へ移行させるために必要な知識や社会的なマナーを徹底的に教え込んでくれる。
・また、事業所の方の考え方というか、障害者だからこの程度で良いのだと妥協しない点のお話を聞かせていただいてすごく感動したので、まず、子供より私の方が先に見学させてもらって決めていた。
・子供も先生と一緒に見学させてもらってここだったら仕事が務まるかなと思い、本人からも希望が出たので、ここに決めさせていただいた。
松田さん
・就労の情報というのは、もちろん特別支援学校の高等部の先生、特に就職担当の先生とか、担任の先生を中心なのでしょうが、それ以外に保護者の情報が参考になったということはあるか。
大森さん
・PTAの研修で何カ所か、見学に行けるので、そのバスの中で隣同士になった方と話したり、学年の違う保護者の方もいらっしゃいますので、その中でいろんな情報をもらっていた。
司会
・提案者の方からいろんなお話が出たのだが、他に何か質問や意見はないだろうか ?
・サポートブックについて、もう少しお話頂けるか。
大森さん(手元のサポートブックを開きながら説明)
・サポートブックというのを、今も手元に持っている。
・どういったものかというと、本人の状態や、障害のある子供の特性を知ってもらって適切な対応や支援をお願いするがイドブップである。
・これを作るのに、目次がずっとあるのだが、その中に障害の特性やどういう風に支援をしたら良いのか、困っている時にはどういう表情をするのかとか、服用している薬とか、いろんなものを書いている。
・ただ、私が作る時に考えたのは、本人の情報を乗せるだけではさあーと読んだら読みましたと返されるだけのものになってしまうので、本人の特性としてコミュ ニケーションが苦手な子供であったので、この中で本人とどういう会話をしていけば本人が会話にくっついてくるのかということも含めて、本人の好きなものと か、好きな曲とか、テレビ番組とか、また、どういうことをしているのかなど、また、地域で活動していることでは、硬筆を習っていたり、オーケストラに参加 しているとか、ボランティアに参加しているという情報も入れている。
・こんなこともしているね、すごいねと言われていただいたら、本人も嬉しいでしょうし、できないことばかり書くのではなくて、本人と一緒に楽しんで一緒に作った。
・これを作ることによって自分のできないことや、これは自慢して良いのだというのが、本人も理解できたと思う。
・表彰されたこともこれに載せている。
・最後のところは、「サンクルール」への通勤に苦労しているところを掲載している。こういったものである。
Q1みどり学園の保護者
・サポートブックというのは、元というのはなくて全部自分で作ったものなのか?
大森さん
・様式ですね。支援学校の方で研修があって、小さなもので何々と項目だけまとめて書いたものをクリップ止めしたものを渡されて、それをはめ込んでいくと良い状態のものであった。
・それはあまり面白くないで、ちょっとネットで探した。「サポートブック」で検索するいろんなものが出てくる。
・その子にあった情報が出てくるので、項目も自分の好きなように変えて、どういう時にどれを使えば良いか、これは医療機関や学校へ提出とかに良いとかが、書かれている。それらを参考にして作っている。
司会
・時間が来たので、最後に松田先生から助言をお願いしたい。
松田さん
・今日、お二方のお話をお聞きして、この場におられない若いお母さんがたに聞かせてあげたいなとすごく思った。何人ものお顔が浮かんできた。
・皆さんもそういう思いで聞いている、先生方、保護者の方、職員の方などいろいろな方がおられるのではないかと思った。
・今日、お二人のお話を聞いて、私が思ったのは、日本の社会、岡山の社会は選択肢を増やすことをまず頑張ってきた。
・地域差はあるかもしれないが、その選択肢は徐々に増えているのであろうと思う。
・ただ、この二方が素晴らしいのは、その選択肢を選ぶのは結局親である。ただ、選択肢を選んだから、自分でやってねというのではなくて、その先でまた支えている一人であるということだ。
・先ほど、津山の先生が言ってくれた問題はすごくあると思う。事業所を立ち上げても結局退いてしまう。お金のならない、面白くない、いろんな問題があるのであろう。揉めるだけだとか。
・でも、私は、今からの福祉というのは、支える側も支えられる側も楽しくないといけないと思う。それは午前中の久保会長が後半に言われたことと一緒である。
・そこは本当に欠かせないキーワードと思ったので、言わせてもらった。
・サポートブックについて、総社市とか倉敷市の場合は、社会福祉協議会とか該当の課に行けば、モデルが置いてあり、サンプルを無償でいただける。
・他の市町村は調べていないので、わからないが、福祉課などに尋ねれば、うちの方で様式を作っているよと市町村もあるので、尋ねてもらいたい。
・サポートブックというのは、私が話した繋ぎ目がすごく大事で威力を発揮する。例えば、担任が変わる時に、ポジティブに子供を紹介していく有効なツールだと思う。
・最後に、皆さんに今日私がお伝えしたいのは、午前中、久保会長がお話ししていたことはここにいる皆さんにも共通する問題である。
・実は、人間には欲求があって、最初の欲求は交流欲求である。皆さん考えてもらいたい。
・転職すると思ってもらいたい。初日、緊張するよね。最初からその職場で役に立ちたいと思うか。誰もそんなことは思わないだろう。
・まずは、一人喋れる人が欲しいと思うだろう。それを交流欲求という。施設の子供も一緒である。我々大人も一緒。
・そして、その交流欲求が豊かなの社会で満たされて、次の段階では、承認欲求という。これは認められる欲求。
・交流欲求が満たされると、いわゆる友達ができるとこの集団の中で認められたいと思うようになる。これはA型やB型事業所でも一緒である。
・そして、最後に何があるかというと、影響力欲求という段階がくることがわかっている。
・つまり、認められた、敵も当然いる、でもある程度応援してくれる人がいると思うと、どうなるか、この所属するグループのために役に立ちたいと思うように なる。これが最終段階だと言われている。で、手をつなぐ育成会の事務局におられる方はこの段階であろう、親として。次に若い親のみなさんに今はいろんな悩 みで苦しんでいるだろうが、いずれは、この役に立つ段階に立ってもらいたい。そのためにも今日お二人が言われた豊かな選択肢、その選択した後、丁寧に対応 する。できれば情報が届いていない市町村がある。そういうところはしっかり行政に親の会が立ち上がって訴えていく。我々も応援する。非難するのではなく、 良い町を紹介してあげれば良い。そうすると市町村の職員も悔しいから頑張る。市町村だけでなく、先生も職員も保護者の我々もそういうことを意識して頑張っ ていく社会。これが今日お二方が示していただいた事例の行く先ではないかと思う。
司会
・時間がまだあるので、質問などあればお願いしたい。
Q
・もともと、津山市教育委員会あたりが作ったのではないかと思うが、「相談支援ファィルはぐくみ」というものがある。みなさんご存知あろうか。確か 2010年頃からあったようなのだが、存在は知っており、県のホームページにも載っているが、ただ、活用されている親にまだお目にかかったことがなく、こ のほかに活用されているなどお話をお聞きできればと思う。
A
・津山の「はぐくみ」というのが出たと聞いた時、すぐにダウンロードして、年金の申請に使えるかなと思ってそこに情報を入力している。そのために使っている。
松田さん
・サポートブックが広がらない一つの問題は、作られたお母さんは作る能力もあり、相談できる人もいたのではないか。ダウンロードして自分なりに作った時、 社会福祉協議会とか、市役所の福祉課のしゃべりやすい職員さん、療育の先生なども良い、相談に載ってくれると思う、そういう人と一緒作ると良いと思う。
新見市の「風の音スマイル」
・「風の音スマイル」でも放課後等ディーサービスをしている。その相談員をしている。事業は四年目になり、私は今年からで細々としているが、今日のお話で、放課後等ディサービスの現状とこれから私たちもしていきたいなと思っている。
・考えているのは、学校で疲れている子供達がリラックスするところと思っている。新見市の方では、保健師や相談支援担当者が協力して拾い上げで繋げてくださっている。田舎であるので、保護者が送ってくるつてがない。
・「風の音」では日中一時支援の方を先に立ち上げていたので、日中の方で送迎を担当しており、それを利用させてもらっている。
・まだまだこれから進めていかなければならないことがあるが、今日のお話を聞いて、頑張っていきたいし、これからもいろいろなところに相談をしながらやっていきたい。
司会
・分科会に参加した皆さん、ご協力いただいた皆さんありがとうございます。これで分科会を終了します。