一般大会 シンポジウム
午後1時から、「知的障がいや発達障がいのある方々のライフステージを支える総社の取り組みとこれからについて」と題してシンポジウムが行われた。
司 会 | 総社市立総社北小学校校長 | 三上 啓子 氏 |
コーディネーター | 一般社団法人岡山県手をつなぐ育成会会長 | 徳田 公裕 氏 |
シンポジスト | 総社市立総社小学校PTA会長 | 加古川 聡 氏 |
総社市インクルージョン推進協議会会長 | 藤村 緑 氏 | |
社会福祉法人吉備路の会吉備路学園家族会会長 | 花房 亘 氏 | |
総社市手をつなぐ親の会会長 | 小川 正雄 氏 |
司会の総社市立総社北小学校校長三上 啓子 氏から、コーディネーター並びにシンポジストの紹介があり、その後、進行をコーディネーターの徳田会長に引き継ぐ。
コーディネーターの徳田会長からは、テーマと趣旨について以下の通り説明がある。
障害のある人たちが、地域でより充実した生活を送るためには、本人の意思とそれぞれの障害特性ニーズに応じ、ライフステージを通して一貫した支援体制が 整備されていることが重要である。岡山県手をつなぐ育成会は、これまで、多くの皆さんの努力によって教育と福祉の発展のための活動を進めてきた。また、障 害の福祉制度も目まぐるしく変わり、制度的には整ってきたが、こうした制度が十分に関係者に理解され、障害のある人たちのライフステージに応じて24時間 いつでもどこでも支援が受けられ、安心安全にしかも生きがいのある暮らしができるようになったか、絵に描いた餅になっていないかを問い直してみてはどう か。
本大会では、総社市のそれぞれの親の会のみなさんに実践に伴う提案をいただくので、これらに基づいて参加者の皆さんと協議を深め、これからの活動の指針が得られることを期待している。
説明に続き、4名のシンポジストからそれぞれ15分程度で提案をいただいた。
提言1 成長と共に変わる 支援のかたち 総社市立総社小学校PTA会長 加古川 聡 氏
総社小学校の特別支援教育の現状は、776名中24名が特別支援学級でお世話になっている。そのうち7名が知的障害、17名が自閉・情緒障害がある。近年、発達障害の子供が急増しており、ここ五年でその数は倍増している。
幼稚園は、発見の時期である。しつけと障害の区別が難しい。スーバーバイザーなど専門家からのアドバイスが有難かった。保護者の理解不足もあるが、先生方 には特別支援学級をポジティブな選択肢としてアドバイスできるようになって欲しい。また、学校の枠を超えた連携も必要であると考える。
小学校は、集団への適応の時期である。特性やこだわりを見てもらい教室の工夫をしてもらった。通常学級との交流では、いじめに対する不安がある。嫌だと言 わない、先生に言いつけないなどがその要因だと思う。障害者を弱者にしないための教育が必要である。また、保護者に対する啓発も重要である。
中学校は、自立の時期である。我が子は現在とても丁寧に指導してもらい、通常学級の生徒と同等の学力をつけてもらった。しかし、義務教育が終了し、「いざ 社会へ出る」ということへの不安はとても大きい。通常の高校に進学する生徒も多くなっているが、発達障害への理解が進むことを願っている。
提言Ⅱ 地域の中で生きること、働くこと ~息子とのあゆみの中で気づいたこと~
総社市インクルージョン推進事業協議会会長 藤村 緑 氏
息子は、知的障害のある自閉症と診断された。総社学園でお世話になったが、地域の小学校に行くことになった。地域の中で顔を覚えてもらい、加配教員も付け てもらった。入学後は、登校班で行けることを目標に練習をした。上級生の支えもあり、母親がつきそう回数を徐々に減らして行くことができた。中学校では、 いじめに対する不安もあったが、先生方の努力もあり充実した3年間を過ごすことができた。
インクルージョン推進のための取り組みとして、仕事体験「ぷちワーク」を行っている。ジョブサポーターに調整してもらい、仕事体験を行っている。花がらつ みや商品陳列などの仕事を通して、顔を覚えてもらったり、課題を見つけたりすることができ、町で会った時に地域の方から声をかけてもらえるようになった。
社会参加をすすめる活動としては、夏祭りへの参加やレトロードでの手伝い、ハートフルそうじゃへの参加を行った。また、地域への啓発活動として、インクルだよりの発行などを行った。
「地域の中で生きる」「働く」を支えるために必要なこととして、職場での障害者理解を進めるとともに、充実した学校生活を送り学習と職業訓練のバランスを 取ることが大切だと感じる。総社市の就労支援は手厚いものだと感じている。特性を理解し、仕事内容とのマッチングを行い、長期にわたるフォローをお願いし たい。岡山県には自閉症についての研究をしている大学もあるので専門の支援者を育成してもらいたい。
終わりに、育ちあって、より豊かな住みやすい地域になることを願っている。
提言Ⅲ 障害のある方たちの終末期の生活を支えるには
社会福祉法人吉備路の会吉備路学園家族会会長 花房 亘 氏
学園組織の概要については、備中国分寺の近くの環境の良いところにあり、吉備路学園、みぞぐち、グループホーム井出の3施設からなっている。家族会の活動状況については、年1回の総会、年3回の奉仕作業、懇談会、成年後見人制度の勉強会などを行っている。
入所者の高齢化が進み、28歳から80歳までの幅広い分布となっており、61歳以上が全体の20%を占めている。保護者のいない入所者にとって高齢化が進 むほど、週末や長期休暇に我が家への帰宅が困難な状況になってくる。このため、学園生活の延長継続を余儀なくされ年間を通して学園への依存度が高くなる。
高齢化する入所者を誰が見るかという問題については、気持ちとしては親が面倒を見たいところであるが、親の寿命には限界がある。兄弟や親族が見る、または、施設が見るためには、クリヤーする条件がいくつかある。親が存命のうちに選択の決定をしておく必要がある。
提言として、高齢者の理想郷がある。これは、上記の問題を解決する一手段として広域型特別養護老人ホームの建設を提唱していくものである。老後を迎えた障 害者は、終末期には穏やかな環境で生活できる当該老人ホームの場の提供を受け、また、人生を全うした障害者で希望する者は、学園で末永く供養できる永代供 養施設の建立を具現化していきたい。
今後の問題として、次の大きく4点があげられる。①各施設の建設・建立に伴う資金の確保(吉備路友の会)、②同一法人の当該老人ホームへの障害者入居率 (10%)の改善(関係省庁等)、③障害の特性・支援区分等により入居条件が左右される(各種関係部門)、④成年後見人の設定を急ぐ必要が有り(家族会 員)
提言Ⅳ 地域で活動する育成会の取り組み課題
総社市手をつなぐ親の会会長 小川 正雄 氏
○保護者同士の話し合いについて
親の会の取り組みとしては、小豆島へのミカン狩りや焼き肉の集いなどを行っている。
障害者についての法律は加速的に進んでおり、市民からの質問も3月から400件を超えた。
総社地域連絡協議会の取り組みについては、県内に10の連絡協議会があるが、事業所とも連携を進めていきたい。また、子供たちの今後の暮らしをどうしていくのかということを考えなければならない。その中で成年後見人の問題も先送りせずに考えたい。
育成会の活動については、全国的に高齢化し資金的にも難しい運営を迫られている。新しい会員の掘り起こしだけでなく、親や家庭が力を発揮して本人たちの活動の支援していきたい。
育成会の機関紙をぜひ購読していただきたい。
質疑応答
会場の参会者からの質問を求めるが、質問がないので、コーディネーターからシンポジストのそれぞれのみなさんから話し合いの大切さについて述べられたので、そのことについて補足発言を求めた。(徳田氏)
・ピュアハート総社が発足して、親同士の相談会が2ヶ月に1回程度行っている。ベテランのお母さんから経験の浅いお母さんへのアドバイスが行われている。(加古川氏)
・インクルージョン推進事業協議会でも2ヶ月に1回程度で、話し合いの会をもっている。(藤村氏)
・作業の前に話し合いを持ったり、5~6名のグループで話し合いやすい雰囲気の中で悩みや要望を出し合ったりしている。懇談会では記録に残し、学園への要望もだしている。(花房氏)
・年配の方と若いお母さん方での話し合いの場を持つようにしている。(小川氏)
○話し合いを持つことで、悩みの解決や新しい情報を得ることができると思う。
24時間支援の話題が出ていたが、新しい環境や人への適応が難しいことを念頭に置いて、サービス利用の促進を図りたい。岡山県はサービスの実施率が悪いという現状がある。
総社市サポートブックを活用して、成長の記録や支援の在り方についての記録を残すことが大切である。これを活用すれば、医療機関との円滑な連携、療育手帳の取得、障害年金の受給、成年後見等に役立てることができる。各市町村にそれぞれ様式がある。
学校で、放課後デイサービスが始まった。通所のない時間帯のサービスも考える必要がある。そういうことも考えながら支援計画を立てたい。
発表者から補足はないか?(徳田氏)
・記録をこまめに残すことが大切である。その時その時に記録しておけば、正しいサービスを受けるときの一助となる。(小川)
〇以前と比べて学校での理解は進んではいるが、今後も啓発を進める必要がある。また、色々な社会参加の場を設けることが大切である。親同士の本音が出る形での話し合いを大切にしたい。(徳田氏)
司会の総社市立総社北小学校校長三上啓子先生から、これまでのシンポジストとの皆さんなどへ会場の皆さんと感謝し、シンポジウムの終了を告げた。