第39回行動障害療育研修会
平成28年2月5日(金)午後1時から午後3時半まで、きらめきプラザ401会議室において県下各地から60名の参加者により開催された。
1 開 会 開催要項
日下岡山県手をつなぐ育成会会長から、平成17年の発達障害支援法成立以来、発達障害のある人の社会適応が年々大きな課題になっていること、また障害者 総合支援法では高度障害者のある人の福祉サービスが取り上げられ支援者の養成研修も進められてきているところである。発達障害のある人たちへの支援を推進 するためにも障害特性とその支援の方法等について理解を深めていただくため、今回の研修を開催することとなった趣旨を述べ、合わせて本日の講師である松田 真正先生を紹介して、開会の挨拶とされた。
2 講 演
演題「気になる子どもの発達を支えたい~親として知っておきたいこと~」
くらしき作陽大学子ども教育学部 松 田 真 正 氏
当日配布資料
・先ほど紹介のあったように9年間、総社市において特別支援教育を担当していた。
・特別支援教育という言葉は文科省で示したものだが、ここ10年間で特別支援教育というはみんなの連携によって支えらる教育であるということが日本全国の活動で定着してきた。
・特殊教育や障害児教育と言われていた時代から、総社市で9年間担当し、保健師さん、保護者と教職員のみなさんの力を借りながら、目の前の子どもたちのためにベストを尽くしていくことを心がけてきた。
・今日は、当時の体験した話と広島で多動な子どもたの保育園を立ち上げたこと、イルカとのセラビーも後半少し取り上げたい。
・現在、勤務している大学についてパワーポイントにより説明。
・私は気になる子どもの教育に向き合えれば向き合うほど、これは人間教育の原点だというように考えるようになった。
・気になる子どもは本人も困っているだろうが、周りの人たちも悩ましているのだが、この子たちから学んだ教育というのはすべての教育に繋がっていくのだと今は考えるようになっている。
・実は、今の日本の教育界に何が大きく入ってきているか、ご存知だろうか。それはソーシャルスキルだ。
・今日、提案したいのはライフスキルというものだ。
・ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、例えば持ち物の貸借りについてどのように話しかけて叶うようにするか。これをトレーニングするもの。
・このトレーニングは子どもたちの社会性を早くから育てていこうということで行われている。
・これはアメリカ生まれのトレーニングであるので、自己主張を強めるもの。
・ただ、最近はこのトレーニングの限界が言われ始めていて、幼稚園とか学校ではとか、仲の良い友達関係では使えるのだが、他では通用しないとも言われている。
・セリフを言わせていくので、場面が限定されていて、その他の場で使えない。
・SSTは、幼児期から中学生時期までの例が多く、高校生以降の対応例が少ないという欠点がある。
・もともと自閉傾向の子どもは社会性が苦手であると言われており、友達とのやり取りはもともと苦手。
・であるから、SSTを集中的に訓練しても効果があったのかなかったのかわかりにくいということがある。
・逆に強引に言わせた結果、テンカンになりトラブルが増えたということになるような弱点が見えてきた。
・スーパーやコンビニの店員さんがおきまりの言葉かけをするが、それらをストックフレーズと呼んでいる。大手になるほどマニュアル言葉が出てくる。そうしたお決まり言葉がストックフレーズという。
・このストックフレーズが園や学校て溢れかえっている。
・例えば、遊びに参加するとき「仲間に入れて」とか、「〇〇貸して」と言っている。決まった言葉が保育園や学校にたくさんある。
・これは集団活動に参加していくためにはとてもわかりやすく有効だ。
・でも少し考えて欲しい。自分の思考や考えを伝えるときまで、このストックフレーズを要求するのはまるでリアリティのない話になってしまう。
・子どもの気持ちを聞くときには、障害の有無にかかわらず一緒である。
・ストックフレーズよりもその子なりのポツンポツンという言葉、または音でも良い。それを大切にしてもらいたい。それに耳を傾け、その心を持っていきたいと思う。
・では、このポツンポツンというのはなんであろうか。
・思考とは、言葉をつなぎながら育んでいくものだというふうに言語学者などは考えられている。
・だから、人間というものは思考を作るときに必ず自分なりの言葉を通る必要があるということである。
・流暢に話せるようになるにはポツンポツンを通ることが大切だということだ。
・障害のある子どもで流暢に話せない子どもは結構いるが、それをじっと待てる先生が現場にはおられる。
・じっくりと聞きながら、こういったことを尋ねたかったんだねと会話をやりとりしている保護者や先生がおられる。
・これらの人たちは心を傾けて聞くことができていると思うし、障害の人の心を理解してあげることができるのである。
・このポツンポツンを聞き取っていくことが障害のある人のリアルな社会性を培っていくことになると思う。
・皆さんは70万人と数字を聞いて何を思いますか。70~80万人。岡山市であれば、市の人口と答えられる。この数字は2010年に内閣府が発表した15~39歳までの「引き篭もり」の人口です。
・研究者によると、この70万人のうち半分弱は何らかの障害のある方であると言われている。
・僕なりに計算してみた。もし60代まで伸ばすとどうなるか。170万人になる。広島県や神戸市の人口の人が社会から引きこもっているということになる。
・それぞれの人がその実態を認識してもらって、自分たちに何ができるかを考えてもらうしかないのではないかと思う。
・今日は、教職員の研修ではなく、家庭でも取り組んでもらうということでライフスキルについてお話ししていく。
・SSTは社会性を養うもので、人との関わり方を訓練するものだが、ライフスキルは食べる、着る、寝るなどの生活習慣を大切にすることを考えている。
・ライフスキルの支援者の考え方として、まず、できそうなことから開始しようということ。
・人によって必要なことや優先順位は違う。その方の生活に必要なことから始めようよというものである。
・例えば、18歳の人と4歳の人では必要なことが違ってきます。その人にとって必要なことから始めるということだ。
・必要なことだけをやっていく。ちょっと見るとしんどくなさそうに見える印象を与えると思う。
・ライフスタイルは広範囲のことをするというのではなく、必要とするということからということで、つまみ食いで取り組んでも良いというものである。
・皆さんの気になるお子さんのことをチェックしてみてほしい。これは朝必要だとされているスキルです。次が放課後に必要なスキルです。これが週一回から数回必要だと言われている。次が月に一回とか数回のもの。
・私の大学のゼミは定員8名で、現在8人を担任している。その中で特性の学生がいる。よく教員同士で話すのだが、特性があっても
支援が必要で、何には引きこもりそうな学生がいる。一方、明るく大学に通ってくる者もいる。あまり変わりはないのだが、何が違うのかと話し合ってみて、出てきている学生には人徳がある。
・ライフスキルはガタガタでも援助要求が出せれば良いが、引きこもりになりそうな学生はそれが出せずにじっと待っている。
・この援助要求が出せるようになるためにも何らの関わりが必要である。
・援助要求を出すとこのように変わってくるという成功体験を積み重ねて進んで要求が出せるようにすることが大切であると思っている。
・二人引きこもっている学生を抱えているが、現在は要求が出るようになり喜んでいる。出来そうなことから初めて昼夜逆転を戻すなど、少しずつ好転させていく。退行していくこともあるので、一緒に取り組んでライフスキルをゆっくり上げていくようにしている。
・ライフスキルですでに出来ているところもあるので、それはさりげなく褒めていくようにしている。
・得意でないこと。時々荒くなるので手伝ったり、ご褒美をあげることも必要。
・本人が得意であっても未熟なものもある。ある障害のある女の子。最近洗濯が好きになり、洗濯をさせている。次々とスキルを上げていくようにしている。その時、注意するとしなくなるので、意欲を削ぐような言葉かけをしないよう心がける。
・金銭感覚が身につくことで何が身につくと思うか。計画性と衝動のコントロールである。
・計画性と衝動のコントロールができることは合理性が身につくということである。
・お金の無駄遣いを止めさせるために始める人は結構多いが、実は性格を変えていく作業である。
・性格は変わらないと思っているが、皆さんも20代30代の頃を思い出してもらいたい。変わっていると感じると思う。
・60代の人は少し性格が丸くなり、ちょっとしたことであれば許せるようになったということがあるだろう。
・実は人間は何歳になってもチャンスがあれば変わっていけるという理論がある。
・その理論によれば、金銭感覚が身につけば計画性と衝動のコントロールが身につくと言われている。そして、最終的には合理的な考え方ができるようになる。
・誰にでも衝動買いの経験はあると思う。欲しくなる時があると思うが、自分の気持ちと戦う時に、僕はこの三つのことを考える。
・欲しいものランク、優先順位で今自分の生活でこれは必要なものかどうか、今この店で見ているから必要だと思っているが、一歩外へ出るとそうでもないんで はないかと思ったり、それから現実の費用はどうか。給料の50%もいるのではと思ったり、次はどのように折り合いをつけるか。ヨーロッパ旅行に行けば35 万円かかるから、今回は沖縄で済ませでは10万円で済むかと折り合いをつける。
・実はライフというのは、このような折り合いの積み重ねである。
・この訓練をするためにも金銭感覚を身につけるということである。
・よくあるのは、お小遣い制にするとかがある。お金の管理をこちら側で管理する。ミニ旅行中のみだけさせてみようとか。マイ財布とかネット管理といったことでしている学生もいる。
・あと買い物の手順を教える。コンビニでそのジュースを買うと税込みでいくらするが、某スーパーに行けばもっと安く済むというやりとりを一般の子供は子供同士でやりとりしている。障害のある子供は人間関係が限定されやすいので、そういう学びが弱い。
・その辺を何歳になっても良いから、楽しく教えられる場があることが大事である。新聞のチラシなどを見ながらあなたが欲しいものがいくらになっているとかの会話をすることが良いと思う。
・高い買い物はお年玉か祖父母に買ってもらうとか、お金をためてとかというように折り合いをつけることを教えていくことが最も大切なことである。
・これはネット管理しているお小遣いですが、お小遣い日にこれだけ入って、貯金にいくら入れて、週にいくら、1日にはいくらというのが出てくる。これは女子バージョンですが、男子バージョンもある。無償で提供されているソフトもある。
・これで、どのように使ったかが出てくる。衣料に使ったか、おやつに使ったかなど。
・ライフスキルは一度では身につかない。とりあえず、短期間やって休んでまた実行するということが大切。
・特に家庭や家庭的な施設でする場合は、スイッチが入りにくいということがあるから、短期間で休みを入れながら繰り返すという考え方がとても大事である。
・障害のある方の対人関係スキルは、最初に話したソーシャルスキルとは違っているが、これも大事なもので、これをどう育てていくかを話して行きたい。
・人間関係がまずくなると暴言を吐いたり、暴力を振るったりすることがある。
・おとなしい人であれば、大集団の活動などは特にストレスがたまるので、引きこもるとか自傷行為が出たりすることが特に出やすい。
・こうした暴力、暴言や行動障害などは、障害の特性ではなく、二次的な障害である。
・ライフスキルにはいろいろあるが、エキスの部分について話す。
・どの年代にとっても大切なことは、質問や頼る行動を育てていくことが大切。言葉だけでなく態度でも良い。それから可愛く見えるような質問の仕方や頼り方をさせるようにする。
・それから「ありがとう」が言える子供に。言えなければ「ありがとう」の会釈ができるように。これだけで可愛いくなり、人生も変わってくる。立ち居振る舞いで人生も収入も変わるとも言われている。その積み重ねが人間の出会いを変えていく。
・謝るということも大事なことである。学生が謝ってくる時にはしっかりと後から褒めてやる。
・情緒が不安定な子供には、幼少期であれば、イライラ虫と向き合うように。ストレスに向き合うようにさせている。
・保育園で取り組んでいるのは、イライラ虫さんと仲良くしようと言っている。
・このイライラ虫がどう移行していくかの図を示しながら、動揺期に「そうか悔しかったか」と同調したり、「イライラ虫が出たら、先生に言います」と援助要求したり、「手を出すより、口で言う方が正義の味方よ!」と意味付けしてあげる。
・バニックや童謡期にサポートするのではなく、正常期にもしバニックなったら、動揺期になったらどう対応するかを考え、その時に適切にアドバイスして、成功体験を与えるようにする。それを繰り替えするうちにこのスキルが育ってくる。
・一般の子供は4~5歳までにトラブルが多くなる。自我が芽生えくるからだ。その時にイライラ虫としっかり向き合うように教えていく。このスキルが育たないで、大学生になっているのがよくいる。
・援助要求が出せるようになってきたら、もう少し待ってくれると言う。相手の様子を待って出せるようにするなど、ハードをあげてあげる。
・ソーシャルボンドというものを知っているか。これは人と人との絆である。ボンドというの束。ロープの束がいっぱいある。私には、お母さんという束、家族 と言う束、職場という束など、いくつもある。実は視えない束がいっぱい繋がっている。それをソーシャルボンドと言っている。
・このソーシャルボンドが切れた時に全く周りとのつながりがなくなるということ。このソーシャルボンドで考える上ではキーパーソンが大事になる。引きこも りはこのソーシャルボンドがなくなっているので、遊びでもなんでも良いから、このキーパーソンを作ってあげることから始める。
・次に余暇ライフスキルに。私も余暇を楽しみに生きており、余暇の時にはイルカと泳いでいる。人生というのは、家族とゆったりとした時間を過ごすとかが中核にあると思うようになった。
・よくあるのは、人と関わればトリブルが増えるよと、そしてどうせ孤立するのだろうと。これは失敗体験を繰り返している人の感じることだ。つまり面倒だか ら、パソコンと携帯の世界にいた方がいくらでも刺激があり楽しめるし、処理も簡単、スイッチを切れば良い。これを繰り替えすと昼夜逆転となっていくことは 明らかである。
・余暇ライフスキルが育っていない子は、ネット上にしか友達がいなかったりするので、その場合、一人とか家族など少人数で楽しめる、例えば屋内プールに行 き、ランチを食べるとか、図書館に言って本を読んでくるなどを週に一回とか、二週間に一回する、犬の散歩、スーパーへの買い物をするなど。ライフスキルを 培うには、結局は低コストであること。普通にできそうなことと大まかなことですること。大まかなことで折り合いをつけるということでもある。
・それから少しずつバリエーションを増やしていく。時には、登山、キャンプ、旅行に。友達と一緒に過ごすことも良い。
・ただ、ゲームセンターは気をつけてほしい。私も障害児と行ったのだがダメだった。結果的にゲームセンターに呑めることになってしまったことがある。
・子供にもよるのだが、ちょっと運動系が入る、散歩などが良い。障害者の肥満が多いのでそのためにも効果的である。
・今、大学では、倉敷市の障害児学級の親の会から依頼があって、大学生がスタッフとなって活動している。例えば岡山のイオンへ一緒に行き、買い物に。その 体験をさせると本人も喜んでいる。月に一回の活動を行い、子供の変化を感じ取ってほしいと思っている。この子は特定のゲームしか関心がないのかと思ってい たが、そうではなく、この子なりに刺激があればオシャレをするようにもなるということに気づくようになる。
・食べ物も小遣いの中からだったらなんでも食べても良いよということもさせる。こうした余暇支援も大学としても行っていきたい。
・大きい子供のことで、子供部屋以外で安心して過ごせる場所が家にあるだろうかということをお聞きしたい。
・できれば、みんなが集う居間とか良いのだが。障害児が引きこもっている子供は居間が居心地の良い部屋でなくなっている。
・それができれば自分の部屋にいるのではなく、時には居間などに出てきて一緒に過ごすということがあれば、親としても顔が見えるので少しはコミュニケー ションも取れるようになる。何も一緒に何かするのではなく、それぞれが勝手なことをしていても良いので、ともに過ごす時間があるということが大切。
・靴を揃えないこどもがいる。問いかけ法といって、「靴は?」と問いかけて注意を促す。我々も大学で学生に対しても行っている。
・これは直接こうしなさいというのでなく、暗にこうしなさいと示している。この方がソーシャルボンドを損なわないでいく良い方法である。
・保育園や幼稚園、小学校の低学年の先生がこの問いかけ法を上手にうまく使っている。
・最近の子供達は距離感もうまく教えてもらっている。60~70cmが人の距離感として良い。
・話し合う時にも正面に座らずに少し斜めに対して座るようにしている。時と状況によっては目を合わさずに話しあうことも必要である。そういう意味で座る位置もよく考えることが大事である。
・最後に、愛情という言葉がある。ドーパミンとかセラトミンを聞いたことがあるか。オキシトシンというものがある。
・あなたの近くに、側にいるだけで落ち着く感じがする人はいないだろうか。
・オキシトシンという物質は結構古く1906年にイギリスのヘンリー・テールというが発見している。
・彼は、赤ちゃんの背中をトントンと叩いてあげる母親の脳には大量のオキシトシンが分泌されている。犬がぺろぺろと舐めるのはあなたを一番尊重しているよと示していること。この犬にもオキシトシンが分泌されている。
・子供が怪我をした時「痛いの痛いの飛んでいけー」と言われたことはないだろうか。この呼びかけをすると本当によくなる。
・このように呼びかけられた子供の脳にもオキシトシンが分泌されて痛みを和らげてくれるのだ。
・あったかい言葉かけはただの気休めではない。実は男性にもこのオキシトシンが分泌されていることが最近分かってきた。
・男性にオキシトシンが分泌されるとどうなるのか、女性の母性が高まると同様に父性が高まり、大切なものを守りたいという気持ちが募ってくる。一番男性で多く出てくるのは、最初に我が子を見たときだということである。
・私がイルカに親しんでいるのは、このイルカと一緒に泳ぐことでオキシトシンがしっかり分泌していると思っている。優しい気持ちになる。暖かい言葉を受けたり、暖かい言葉を発信したりすることが大切だということを言いたい。
・暴力、暴言を吐く子供がもし犬を可愛がっていれば、それを手がかりにするとか、女の子がぬいぐるみが好きであるというのであれば、それを利用し、本人のほっとする場と時間を確保してあげる。
・池田小の事件の犯人にも少しでもこのような配慮ができていれば少しは変わることもできていたのでないかと思っている。
・長い間ご静聴下さりありがとうございました。
質 疑
Q 中学校で不登校支援をしている。授業に入れない生徒に別の部屋で関わっている。現在、中学三年だが、一年生当時から不登校に。友達がいなくて、どのようにしていったら良いのかと言われることもある。私もどのように応えてやれば良いのかわからない。
どのようにアドバイスがあれば教えて欲しい。
A 総社市で不登校支援にも関わっていた。まず、確認しておきたいのは、欲求ということ。みなさんにも欲求というものはあると思う。その子からそのよう な発言があったということはこれは宝物で、交流欲求が始まったということである。欲求は三段階あると言われている。この先、この子はどこに向かうのか、承 認欲求だと思う。その先にクラスに帰って集団に入って役割を果たしたりする影響力欲求。その子がまず交流欲求を先生に訴えたということに私は感動した。別 室にくる仲間の中で合いそうな子供と先生の三人で軽く喋ったり、遊んだりして人間関係が深まれば良いと思う。クラスに入るのに抵抗があるのであれば、学級 担任に相談して、その生徒に関心がある生徒に時々遊びに来てもらうという、いわば逆交流をしてもらう。それを様子を見ながら進めていく。私の場合は、給食 を一緒に。行動を共にすると打ち解けやすい。これをきっかけにクラスで給食をというようにしたことがある。自由時間で適当に話し合うというのは一番やりに くい。
Q 成人の人で発達障害があり、B型事業所に通所しているが向く仕事向かない仕事があり、どのように関われば良いのか。
A 嫌いな作業と好きな作業で本人の意欲の差があり、それが行動にも現れるのが問題なのであろう。先ほどのライフスキルのサポートのところで四つのグラ フを示したと思うが、苦手でありできないところに該当する可能性があると思った。気をつけないといけないのは、失敗体験をなるべくさせないように持ってい くことがないと、道は開けてこない。最初はサポート量を多くし、苦手なものは時間を短くして、それと動機付けを。その作業が終わった後、本人が楽しめるよ うな休憩時間を設定しておくことも大切。
Q 言葉がきついのですが、すぐにキレる子供への対応は?
A すぐキレる子どもについては、イライラ虫に向き合う時、すぐ切れるとすぐ終わるという誤った体験している。暴走力の子供と接している時、 彼らがいうのは、早くキレる子がえらいと言っていた。そうではなく、気持ちをコントロールして優しい気持ちを持って乗り越えていくことの方がカッコ良いの だと感じさせていく。動揺期に援助の出し方を教えていくことが切れやすい子どもに対して地道な方法であると思う。認める声かけ、本人が心地よい声かけをし ていくことが大事である。本人が得意なことを言わせたりさせたりすることがあればベスト。1:43:53
Q 集団での叩く、人をカムなどの問題行動をなくす対応の仕方とこだわりのある児童・生徒への対応についても教えて欲しい。
A 叩くことが表現方法となっているので、援助することで適応できる表現の仕方を教えていかねばならない。先生が、もうボツボツやりそうな時がわか るので、問いかけ法で声かけをする。そうすると言い始める。それを拾ってやり、こうしてみればと助言する。できたら、今日は叩いたりしないでできたねという ことを繰り返してやると自分で声を上げていくようになる。
Q 引きこもりについていつ頃から出てきて、どういう対策があるのか教えて欲しい。
A 推測で良いだろうか。日本の戦前、戦後直後、昭和30年代には不登校というのはなかった。これをアメリカの学者が分析している。昔は家事労働に携わら せることが多かった。学校へいけば無駄話ができるし、楽しい。うるさい親はいない。今は、電化製品の普及で子供が家事をする必要がなくなった。親も子供に 手伝ってもらうよりは自分でした方がやりやすい。子供の方は遊ぶ時間が増え、ゲームやパソコンに時間を使う。しかも家にいればジュースもお菓子もあり天国 となる。これが引きこもりを引き起こす社会背景になっていたと言われている。これをなくせば良いというのは大変難しい。人間は一旦楽な暮らしを続けると洗 濯機や炊飯器がなくせるかという議論となる。その時代に合ったひきこもり対策が必要ではないかと思っている。考え方ももっと発想を変える必要もあるのでは ないかとも思っている。つまり引きこもった状態で仕事ができるということもあるのではないかという価値観もないとまずいのではないかとも思っている。
A 完璧な親は誰もいないと思う。親も助けられながら一人の親になってきている。子供が荒んでいるときに親が小言を言っていいと思う。お母さんはこういう会 話ができたら良いなあと思って母親しているのだとか、時々は聞かせても良いのではないか。家事をしながら、つぶやく。それを必ず子供は聞いている。それは 幼児でも届くと思っている。それは願いでもある。
Q 親の立場でことでお聞きしたいのだが、我々津山では中学校単位で交流会をしている。その中に入らせていただいて保護者といろいろと話し合いをさせても らっている。その中で母親や父親が私たちの子供は発達障害であると言われる方が8割おられる。知的障害であると言われる方が2割である。重複されている方 もややおられる。知的障害だと思われる子供さんでも親御さんは発達障害だと言われる。教育委員会でも何らかの障害のあるお子さんが1割ぐらいいると言われ ている。どうしてこの10年ぐらいで発達障害が増えたのでしょうか、教えていただきたい。
A 発達障害の増えた理由ですが、結論から言うと特定できていません。特に発達障害の中で増えているのは、自閉症圏内の人です。これは20年前僕が大学で 習ったことでは今は100人に1人がそれ以上。岡山県はそれを上廻る県だと言われている。幾つかの説はある。ただこれは一研究機関の説であり、世界の説で はない。ここ急増してきているのは、食べ物が大量生産型になった時、薬品が使われていた。それはなかなか体内から出ませんから出産の時に子供に託して出す と言うことから脳の一部に機能障害を起こしてと、こういう方が増えているのではないかと推測する論文はいくつか見たことがある。ただ、これは今後否定されるかもしれない。現在はそうした薬品が使われない ようにしているので、そうした食品を食べた母親から出産する子供に脳の機能障害がある子供ができないければ、その説が当たることにはなるがなければ違うこ とにもなる。それともう一つの説は昔からいたのではないかと言うもの。昔は変わった人と言われていた。なぜ増えたかというと診断のできる医者が増えたから だ。特に岡山県の県南では発達障害の診断ができる医者がここ15年で急増している。このほか、福岡県、徳島県が多い。私の個人的な見解としては、前者とい うよりも後者の方と思っている。また、社会文明の進歩。電化製品の進化が引きこもりを増やしていると思っている。
3 閉 会
中島県育成会副会長から、まず、松田先生には、数々の現場での経験に基づいた貴重なお話をいただき、ありがたく厚く御礼申し上げます。我々親とすれば子 供のことで頭にくることがあるが、その時に一つ深呼吸して、つぶやきなさいとか言われたことがある。待ってあげたり、同情したりする時にいろんな言葉があ るなど、キーポイントになることをわかりやすくお話いただいた。また、ありがとうとかスミマセンなどの暖かい声かけができるというアドバイスもいただいた ことを参考に実践したいことなど述べ、閉会の挨拶とされた。